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多発性硬化症(MS) ![]()
1. 急性期の治療
急性増悪期のできるだけ早期に治療を開始する。これにより、病巣の広がり、炎症による二次的変性が抑えられるので、機能回復が高いレベルで期待できる。診断確定のみならず治療効果判定のためにも、MRI(ガドリニウム造影を含む)、髄液検査、誘発電位などは治療開始前に行っておいた方がよい。
急性期の治療法としては、ステロイドパルス療法が一般的である。ソルメドロール1gを生理食塩水50〜100mlに溶かし、1〜3時間かけて静注する。これを3日間連続で行い、症状により2〜3クール繰り返す。ただし、慢性進行性の経過をとるMSは反応性に乏しいことが多い。
高単位ビタミン剤が神経再生に有効であるとされている。対症的には、呼吸障害に対する呼吸管理、四肢麻痺には良肢位保持、膀胱直腸障害に対する導尿などの処置が必要になる。
回復期には、有痛性強直性痙攣(異常感覚のこと、痙攣を伴わないこともある)が出現することがある。脱髄巣の再生に伴う異常興奮が原因と考えられており、ナトリウムチャネルブロッカーであるカルバマゼピン(100〜300mg/日)が有効である。無効例にはヒダントインが有効なことがある。この時期、重症度にもよるが、リハビリテーションを行うことが有効である。
2. 寛解期の治療
MSの寛解期に、ステロイドや免疫抑制剤を用いて再発予防を行うことに関しては議論のあるところである。一般的には急性増悪期のステロイドパルス療法が終了した時点でステロイド投与を中止するが、1〜2ヶ月経口的に減量しながら投与することもある。長期にステロイドを経口的に投与しても再発率に影響しないとする報告が多い。しかし、ステロイドを中止してしまうと症状の増悪をみる症例があることはよく経験するところである。どのような症例にステロイドの継続治療が必要なのか、必ずしも明らかではない。
下肢痙性に対しては抗痙縮薬(バクロフェン5〜15mg/日、ダントロレン25〜75mg/日)が有効である。特に睡眠中に生ずる痙直に対してはクロナゼパム0.5〜1.0mg/日が著効をみることが多い。疼痛に対してはカルバマゼピン100〜300mg/日が有効である。無効な場合は、フェニトイン、フェノチアジンの順に試してみるとよい。入浴により症状の悪化をみる場合、ボディクーリングにより症状をコントロールできることがある。薬物療法と併用してもよい。精神症状としては、多幸的になる症例も多いが抑鬱的になる症例もあり、マイナートランキライザー、抗うつ剤などが必要になる症例もある。
3. 再発予防
MSの再発はストレス、過労、感染症などをきっかけにして起こることが多いので、うがい・手洗いなど日常生活上の注意を励行させる。夏期の直射日光に長時間暴露されること、長時間の入浴は潜在性の病変を顕在化させるため避ける。
(郭 伸 東京大学医学部神経内科:Therapeutic Notes : 12,1997)