シャイ・ドレーガー症候群 

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 シャイ・ドレーガー(Shy−Drager)症候群 


 Shy-Drager症候群は著明な自律神経障害を主徴とする変性神経疾患である。発汗の低下、皮膚の乾燥、起立性低血圧、失神発作、インポテンツ、尿失禁、尿閉、便秘などが主たる自律神経症状である。

 治療はもっぱら起立性低血圧の管理である。繰り返す失神発作は多発性の脳梗塞を引き起こすため極力防止しなければならない。ドロキシドパ(ドプス錠)は、細動脈収縮により血圧を保つとともに、この症候群に合併しやすいパ−キンソニズムにも効果があるので、第一選択として用いてよい。失神発作を止めるためには常用量を超えた投薬が必要なことも多い(900〜1200mg)。静脈の収縮に働く塩酸スプリフェン(カルニゲン錠 24〜72mg/日)、塩酸ミドドリン(メトリジン錠4〜8mg/日、)など末梢血管収縮に働くα
1受容体刺激薬、循環血液量を増やす目的で酢酸フルドロコルチゾン(フロリネフ錠0.02〜0.1mg/日)、は、補助的に使用する。ドロキシドパの副作用としては、抗Parkinson薬にみられるもので、胃腸障害、幻覚などの精神障害、不随意運動、悪性症候群などである。また、座位・立位での血圧がコントロールされていても、臥位では極度の高血圧を呈する場合がある。この場合、寝台の傾斜をつける(頭部を高くする)、夜間の投薬量を減量する、維持血圧のレベルをやや低めに抑えるなどの調整が必要になる。このほか、プロスタグランジン合成阻害に働くインドメタシン(75〜150mg/日)、アスピリンが有効な例もある。弾性ストッキングを用いて下腿容量血管への血流のうっ滞を防止する方法も有効であるが、夏期は使いづらい。残念ながら起立性低血圧は夏期に多く冬期には訴えが少なくなるのが普通なのでその有効性はますます狭められてしまう。

 生活上のアドバイスとしては、臥位から座位、座位から立位への体位変換時に注意し、急激な体位変換を避けることも起立性低血圧の予防に有効である。排尿便、飲食などで脳の乏血による失神発作が起きやすいので、洋式便器の使用、食休みの励行を勧める。

 尿失禁は尿閉に伴う溢流性尿失禁であることが多い。塩酸フラボキサート(ブラダロン錠)塩酸オキシブチニン(ポラキス錠)などで、特に夜間頻尿なとが抑制できることがある。排尿困難には臭化ジスチグミン(ウブレチド錠)などのコリン作動性薬が有効なことが多い。時間を決めた排尿、腹庄をかけるなどで、残尿を極力減らすことなどに対処しきれなければ、訓練の上、自己導尿を指導せざるを得ない。夜尿や溢尿は患者の精神的な負担にもなるが、なかなかコントロールが難しいことが多い。就寝前の排尿・自己導尿で膀胱をカラにしておくことが一つの対策である。便秘も頑固なことが多い。緩下剤としては塩類下剤・膨張性・浸潤性下剤を主剤とすべきで、大腸刺激性下剤は腸管支配の自律神経の過敏性のためしばしば効きすぎてしまい、コントロ−ルが難しい。使用する場合は通常量の1/4量程度、極少量から始めるとよい。発汗低下、皮膚の乾燥に対しては、対症的にスキンクリ−ムの塗布、局所の清潔を行う。いびきも主に家族からの訴えとしては多いが、有効な対処法がない。枕の高さを工夫、口腔外科的に口蓋垂を持ち上げる装具を作成することによりある程度の効果を上げることはできる。

 予後は、おそらく心伝導系、血圧の異常変動などによる突然死が起こることがあり、不良である。経過中パ−キンソニズムや小脳失調を合併することも多く、これらも薬剤反応性が悪く、進行も早い。10年以内に臥床状態になることが多い。

(郭 伸 東京大学医学部神経内科:Therapeutic Notes : 26,1997)


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