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神経疾患のステロイド治療 ![]()
ステロイドの適応と使用法
神経疾患にステロイドを適用する場合、抗浮腫作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用を狙っている。抗炎症作用を治療目的とする対象疾患は、脱髄疾患(多発性硬化症)、ニューロパチー、筋炎、神経筋接合部の疾患(重症筋無力症)などで、これらの免疫性神経筋疾患の場合には、その病勢が活動性ならば、プレドニゾロン1mg/kg(場合によっては1.5mg/kg、通常100mg/日を上限)を基準量として投与を開始し、1カ月を単位として継続投与する。減量は隔日投与に持っていくべく朝1回投与とした後に、隔日に5ないし10mg/日を毎週ないし隔週に減量するくらいの速度でゆっくり行う。この場合、大量投与日の投与量は変えないか、場合によっては減量分をむしろ増量し、総投与量を変えない方法もとられる。少量投与日の投与量は、0mgにする場合と5〜10mg/日で維持し、大量投与日の用量を減量していく場合がある。ここまでに、3ないし4カ月をかける。大量投与日の投与量を減量する前に、完全な隔日投与で約1カ月観察し、効果が上がっていることを確かめてから、大量投与日の減量を行うべきである。もし効果がなければ、この時点で免疫抑制薬の併用を考慮する必要がある。特に血管炎の場合、維持量への減量も月に5mg/日程度のゆっくりした速度が望ましい。この時期では減量の速度を決める要因の多くは、臨床経過による。
一方、低用量(20mg/日程度)から開始し徐々に漸増し、有効用量で維持した後、減量する漸増漸減法がとられることもある。この方法の利点としては、疾患により長期ステロイド投与が必要であり、治療有効量が低用量である場合には、高用量のための入院期間を縮めることができる。われわれの施設では、重症筋無力症に対して従来は漸減法で冶療していたが、最近、漸増漸減法を取り入れ、有効例が増えている。両者の長短についてはまだ解析が済んでいない段階なのではっきりしたことはいえないものの、漸増漸減法も漸減法に劣らない効果が期待でき、入院期間の短縮に役立っているように思われる。
ステロイドの副作用
重篤な副作用として注意しなければならないのは、感染の誘発・増悪、糖尿病、消化性潰瘍、血栓誘発・動脈硬化などがある。このほか、長期投与により問題になるものとして、骨粗鬆症・大腿骨頭壊死・脊椎圧迫骨折などの骨病変、ステロイド筋症、皮膚萎縮・ステロイド紫斑などの皮膚病変、精神症状、電解質異常などがある。定期的なチェックを行うとともに、対症療法・予防的治療などに留意する。骨病変に対しては、カルシウム製剤・活性型ビタミンD・K剤、カルシトニン、骨代謝改善薬(イプリフラポンなど)があるが、いずれも決め手ではないので、適度な運動、体重のコントロールなどの日常生活上の注意を促すことが重要である。ステロイド筋症は特に多発筋炎の治療時に問題になり、近位筋を侵すため、原病の悪化との鑑別が難しい場合があるが、血清CK値は上昇しない。中に激症型の急性四肢麻痺性ステロイド筋症があり、大量投与時、非脱分極性神経筋遮断剤(塩化スキサメトニウム、ツボクラリンなど)との併用時に、急性の筋力低下が生じた場合には注意を要する。精神症状は不眠などの軽度のものから、うつ・繰・幻覚妄想など重度のものがある。早めに診断して、必要に応じて抗不安薬、向精神薬などを投与する必要がある。場合によっては、ステロイドの減量を余儀なくされる。
(郭 伸 東京大学医学部神経内科:Therapeutic Notes : 19,1997)