無症状期における血中プリオンの検出
Presymptomatic Detection of Prions in Blood
P. Saá J. Castilla, and C.Soto
George and Cynthia Mitchell Center for Alzheimer's Disease Research, Department of Neurology, University of Texas Medical Branch, Galveston, USA.
Science 2006 Jul 7;313(5783):92-4
背景
プリオンは、感染性海綿状脳症(TSE)の原因である蛋白質性感染性物質と考えられている。感染性物質の主成分である変性PrPScは、この疾患の唯一の代替マーカーとして有効性が検証されており、その検出感度の鋭敏さは本疾患の感染拡大を最小限にくい止めるうえできわめて重要である。
方法
感染、非感染動物の脳抽出物をハムスターの腹腔に注入し、時間(日)を追って採血した。その白血球分画をprotein misfolding cyclic amplification(PMCA)法でPrPScを定量的に測定した。時期は無症状期から有症状期にかけて行った。
結果
無症状期にすでにPrPScは出現し始め、40日後に60%の陽性ピークを示した。この時期に血中に認められるPrPScは、脾臓、またはリンパ節で複製されたプリオン由来のようであった。その後、一時的にPrPScは減少し、80日後には認められなくなった。しかしその後、100日を越えて有症状期では、血中のPrPScは再び上昇して80%の陽性率を示した。このPrPScは脳から漏出したもののようであった。
結論
感染はしているが臨床的には症状のない動物から異常プリオンを特異的に、また非侵襲的に検出できることは、今後、ヒトでも牛でも無症状期でのTSEの早期診断が可能であることを示し、感染拡大防止に多大な貢献を示すと考えられる。
コメント
プリオン病は感染性海綿状脳症(TSE)とも言われ、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病、牛では牛海綿状脳症(BSE)等とも言われている。正常プリオン(PrPC)が異常プリオン(PrPSc)に変性し、それが感染源となる伝染性疾患である。
本研究では少なくとも3つの重要な発明・発見が認められた。第1は、血液を使った侵襲度の低い検索法であるprotein misfolding cyclic amplification(PMCA)法が開発され、特異的に感染の本体であり、また感染マーカーであるPrPScを定量的に測定できるようになったことである。第2は、無症状時期でも血中に脾臓、またはリンパ節からPrPScが産生され、症状発現時期のPrPScは脳で産生され、脳血管関門が破壊されて血中に出てきたと考えられる点である。第3は、感染後、無症状期で測定可能であることを示したことで、輸血等無症状の人から他人への感染を防止することが可能となり、これは感染拡大の防止に重要である。BSEの場合、牛からヒトへの感染の予防になる可能性もある。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 身体防御健康医学 吉崎 和幸先生
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