関節リウマチに対する抗TNF抗体治療と重症感染症および悪性腫瘍の併発リスク
Anti-TNF Antibody Therapy in Rheumatoid Arthritis and the Risk of Serious Infections and Malignancies
Systematic Review and Meta-analysis of Rare Harmful Effects in Randomized Controlled Trials
T Bongartz, A. J. Sutton, M. J. Sweeting, I. Buchan, E. L. Matteson, and V. Montori
Division of Rheumatology and Department of Internal Medicine, Mayo Clinic College of Medicine, Rochester, USA
JAMA 2006 May 17;295(19):2275-85
背景
腫瘍壊死因子(TNF)は、宿主防衛と腫瘍増殖の制御に重要な役割を果たしている。このため、抗TNF抗体治療薬投与は重症感染症と悪性腫瘍の発生リスクを増加させる可能性がある。
目的
関節リウマチ患者に抗TNF抗体治療薬を投与すると重症感染症や悪性腫瘍の併発リスクがどの程度高まるのかについて、抗TNF抗体治療薬に関する無作為化試験を行った研究論文をシステマテックレビューし、選んだ論文のデータをメタアナリシスの手法を使って評価する。
方法
EMBASE、MEDLINE、Cochrane Libraryのデータベース、および欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会の年次学術総会の電子抄録集から2005年12月までの文献を系統的に抽出した。また、抗TNF抗体製造会社2社に対し、副作用情報についてインタービュー調査を行った。
抗TNF抗体治療薬(インフリキシマブ、アダリムマブ)を関節リウマチ患者に12週間以上の期間、無作為割付法で投与した研究論文を対象とした。この基準に該当した研究論文が9本あった。これらの論文の中の患者総数は、抗TNF抗体治療患者3,493例、プラセボ投与者1,512例であった。
研究データの質が確認でき、intention-to-treat分析で重症感染症と悪性腫瘍に関するリスクを検討した研究論文からデータを抽出した。公開された研究情報については主要な研究者と企業スポンサーに直接確認した。
結果
抗TNF抗体治療薬投与患者のプラセボ薬投与患者に対する悪性腫瘍と重症感染症(抗菌治療または入院が必要な感染症)併発リスクについて、累積Mantel-Haenszel法によりオッズ比を算出した。薬剤量を高用量、低用量の2つに分けて併発リスクを評価した。悪性腫瘍と重症感染症の累積オッズ比は、それぞれ3.3(95%CI 1.2-9.1)と2.0(95%CI 1.3-3.1)であった。高用量投与患者の方が低用量投与患者に比べ悪性腫瘍の併発リスクは有意に高かった。抗TNF抗体治療薬投与により1つの新たな腫瘍発生リスクを明らかにするには、6〜12カ月間投与される154例(95%CI 91-500)の患者数が必要であった。1人の重症感染症の併発リスクを明らかにするには、3〜12カ月間投与する59例(95%CI 39-125)の患者数が必要であった。
結論
抗TNF抗体治療薬を投与した関節リウマチ患者では重症感染症の併発リスクが高かった。また、悪性腫瘍リスクは投与量が増えるにつれて高くなっていた。無作為化対照試験の論文を収集し、データをプールしてメタアナリシスを行うことで、低リスクの薬害を評価することが可能であった。メタアナリシスは低リスクの薬害評価の有用な方法である。
コメント
近年、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎などの難病患者に対し、抗TNF-α抗体が使われるようになってきている。しかし、長期投与の場合、悪性腫瘍の発生、感染症(結核など)、および自己免疫疾患の併発などの安全性が問題とされている。その副作用の評価には多数の治療患者の臨床試験が必要となるが、1つの臨床試験からのデータ数が少なくとも一定の質の論文の研究データを合算するメタアナリシスの手法を使えば、評価を行えることを示したものである。わが国は欧米社会と比べて結核の既感染者が多いことから、投与患者では結核症の併発に留意することが大切である。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 予防環境医学 高鳥毛 敏雄先生
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