ALSにおける非侵襲的陽圧換気療法:許容度と生存期間の予測因子
Noninvasive positive-pressure ventilation in ALS: Predictors of tolerance and survival
D. Lo Coco, S. Marchese, M.C. Pesco, V. La Bella, F. Piccoli, and A. Lo Coco
ALS Research Center, Department of Neurology, Ophthalmology, Otorhinolaryngology, and Psychiatry, Universita di Palermo, Palermo, Italy
Neurology 2006 Sep 12;67(5):761-5
背景
現在のガイドラインには、ALSにおける低換気には非侵襲的陽圧換気療法(NIPPV)を用いた呼吸管理の導入が示されている。しかし、筋萎縮などの症状が進行する中で生存期間が延長するという懸念や、NIPPVに及ぼす球障害および身体の機能障害の影響が明らかでないという理由から、必要な患者の一部にしか適応されていない。
目的
ALS患者において、NIPPV後の許容度と生存期間に相関する因子を同定すること、またNIPPVの肺機能への影響を調べること。
方法
現在発表されているガイドラインに従い、ALS患者71例にNIPPVを導入した。NIPPVの肺機能への影響およびNIPPV導入後の許容度と生存期間に影響を与える因子について研究を行った。
結果
患者44例(61.9%、95%CI 50.6〜73.2)がNIPPVを許容し(1日4時間以上の使用)、27例(38.1%、95%CI 26.8〜49.4)は非許容(1日4時間未満の使用)であった。軽度または中等度の球症状が認められた患者は、重度の患者よりもNIPPVの許容度が高かった(オッズ比6.09、95%CI 1.18〜31.52、p=0.031)。NIPPV導入後、許容患者では非許容患者よりも努力肺活量(FVC)の低下が緩やかであった(p=0.002)。NIPPV開始後のFVC低下率(リスク比[RR]0.78、95%CI 0.65〜0.94、p=0.01)は、NIPPVの許容度(RR 0.32、95%CI 0.13〜0.78、p=0.013)とともに、患者群全体における生存期間の唯一独立した予測因子であった。多変量解析から、ボディマス指数(BMI)は、許容患者でのNIPPV導入後の長期生存期間の最も有力な予測因子であった(RR 0.77、95%CI 0.61〜0.96、p=0.022)。
結論
NIPPV導入後の生存期間は、1日4時間以上のNIPPV使用およびNIPPV開始後のFVC低下率と独立して相関した。ALS患者の球障害の重症度および換気導入時の栄養状態が、許容度と生存期間を予測すると考えられる。
コメント
1990年代に入り人工呼吸器療法が可能となり、ALSの告知においての人工呼吸器装着で生命を延長させるか否かの選択は、患者自身、家族、医療従事者それぞれにとり頭を痛める問題の1つである。一方、NIPPVは補助呼吸であり、呼吸補助機能に関しては限界があり、適応がはっきりすればすべての適応症例に施行すべき治療法と考えられる。本論文は適応選択に関して非常に参考になる論文である。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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