多発性硬化症における寄生虫感染と免疫応答との関連性
Association between parasite infection and immune responses in multiple sclerosis.
J. Correale, M. Farez
Department of Neurology, Raul Carrea Institute for Neurological Research (FLENI), Buenos Aires, Argentina.
Annals of Neurology. 2007 Feb;61(2):97-108.
目的
寄生虫感染と多発性硬化症(MS)における病勢増悪数の減少および免疫活性の変化との関連性について検討した。
方法
前向き二重コホート研究において、好酸球増多症を随伴症として持つMS患者12例の臨床経過と画像所見を評価した。すべての患者の糞便検体は陽性で、寄生虫感染があった。すべての寄生虫感染MS患者において、過去2年間に好酸球増多はみられなかった。好酸球数は3〜6ヵ月間隔で測定した。好酸球数が増加した時点で患者を本試験に組み入れた。ミエリン塩基性蛋白質特異的末梢血単核細胞によるインターロイキン(IL)-4、IL-10、IL-12、形質転換成長因子(TGF)-β、およびインターフェロン-γの産生をenzyme-linked immunospot(ELISPOT)を用いて測定した。FoxP3とSmad7の発現は逆転写PCRによって測定した。
結果
4.6年の追跡期間中、寄生虫感染MS患者では、非感染MS患者に比べて病勢増悪が有意に少なく、能力障害スコアの変動はごくわずかで、MRI上の変化も小さかった。さらに、感染MS患者では非感染患者に比べ、末梢血におけるミエリン塩基性蛋白質特異的反応においてIL-10とTGF-βの有意な増加、およびIL-12とインターフェロン-γ分泌細胞の減少がみられた。感染患者からのクローン化ミエリン塩基性蛋白質特異的T細胞は、IL-2およびIL-4産生の欠如、IL-10およびTGF-βの高度分泌によって特徴付けられ、T細胞サブセットのTrlおよびTh3に類似したサイトカインプロファイルを示した。さらに、感染患者におけるCD4+CD25+ FoxP3+ T細胞のクローニング頻度は、非感染MS患者に比べて大きく増加していた。最後に、TGF-βを分泌している感染MS患者由来のT細胞においてSmad7メッセンジャーRNAは検出されなかった。
解説
IL-10とTGF-βの産生増加は、CD25+CD4+ FoxP3+ T細胞の誘導とともに、寄生虫感染中に誘導される制御性T細胞がMSの経過を変化させ得ることを示唆している。
コメント
感染性疾患による自己免疫疾患への修飾は以前より言われているが、本論文は寄生虫感染とMSの関係を検討したものである。寄生虫感染がIL-10とTGF-βを産生する調節細胞を増加させ、T細胞の増殖抑制とINF-γの産生抑制を介し、MSの病勢を良い方向に変えることが導き出されている。MSの発症や病勢に関わる環境因子は種々指摘されてきたが、Th2優位に導く寄生虫感染という環境因子が、MSのTh1優位の免疫状態を抑制し病勢を改善させたと考えられる。以前、「日本にはMSはない」と言われた時代もあったが、寄生虫感染という環境因子が案外影響していたのかもしれない。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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