医療および介護施設における転倒、骨折の予防対策と認知障害との関連:文献のシステマテックレビューとメタアナリシス分析から
Strategies to prevent falls and fractures in hospitals and care homes and effect of cognitive impairment: systematic review and meta-analyses.
D. Oliver, J. B. Connelly, C. R. Victor, F. E. Shaw, A. Whitehead, Y. Genc, A. Vanoli, F. C. Martin, M. A. Gosney
University of Reading Institute of Health Sciences, Reading RG1 5AG
BMJ. 2007 Jan 13;334(7584):82. Epub 2006 Dec 8.
OBJECTIVES
介護および医療施設入所者おける転倒と骨折の予防対策の効果を評価し、認知障害との関連を検討した。
デザイン
医療および介護施設の入所者を介入群と対照群に分けたデザイン研究に基づく論文をシステマテックレビューし、メタアナリシスの手法を用いて評価した。メタ回帰分析を行って認知症の影響を取り除き、また研究の質やデザインも考量して効果評価を行った。
データソース
文献データーベースMedline, CINAHL, Embase, PsychInfo, Cochrane Database, Clinical Trials Registerを使い、2005年1月までの文献をキーワード検索して関連論文をリストアップした。総説論文とガイドラインの中の引用文献については手作業でリストアップした。
結果
システマテックレビュー、エキスパートレビュー、またはガイドライン論文115を含め1,207の論文が抽出された。この中から一定の基準に合致した論文は92であった。実際の論文を取り寄せて検討した論文は43論文であった。この中の13論文は医療施設における多面的介入研究によるものであった。医療施設における論文のメタアナリシスからは、転倒の危険度は介入群では0.82(95%信頼区間0.68〜0.997)に有意に低下していた。しかし、転倒者数または骨折には有意な減少は認められなかった。介護施設におけるヒッププロテクターを利用した11の介入研究論文のメタアナリシスからは、股関節骨折の危険度は0.67(0.46〜0.98)に有意に低下することが示された。しかし、転倒率は有意に低下していなかった。転倒者数にも低下は認められなかった。医療および介護施設における残りの19論文は、両施設における身体拘束用具の取り外し、転倒警報装置の利用、介護施設における運動やカルシウム/ビタミンD剤投与、施設環境改善、医療施設における投与薬剤との関連を検討したものであった。これらの論文のメタアナリシス分析では、転倒、転倒者数および骨折に対して有意な関連を示すものもあった。しかし、研究方法が不十分であり、有意な関連を有すると結論づけることはできなかった。メタ回帰分析を行い、転倒予防や骨折と認知障害との関連をみたが、有意な関連性は認められなかった。
結論
医療施設における多面的介入が転倒数を減少させること、介護施設においてヒッププロテクター使用には股関節骨折の予防効果があることを示す論文が存在した。しかし、医療および介護施設における単独手段を用いた介入研究、介護施設における多面的な介入研究には、予防効果が十分にあることを示すものはなかった。
コメント
医療施設や介護施設の入所者が転倒して骨折することはあってはならないことだが、現実には存在する。どうすれば予防できるのかについて、これまでの研究論文をレビューして分析して明らかにしようとしたのが本論文である。認知症との関連を調整してみても、有意に予防対策につながっていることが明らかにされていない現状が認められました。介護・看護職員を増やし、施設環境を整備すること以外に有効な手だてがないのかも知れない。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 予防環境医学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed: