プログラニュリン(Progranulin)配列変異を伴う前頭側頭型認知症の臨床病理学的特徴
Clinicopathologic features of frontotemporal dementia with Progranulin sequence variation
S. Spina, J. R. Murrell, E. D. Huey, E. M. Wassermann, P. Pietrini, M. A. Baraibar, A. G. Barbeito, J. C. Troncoso, R. Vidal, B. Ghetti, J. Grafman
Indiana Alzheimer Disease Center, Department of Pathology and Laboratory Medicine, Indiana University School of Medicine, Indianapolis, USA.
Neurology 2007 Mar 13;68(11):820-7
背景
ユビキチン陽性封入体を伴う前頭側頭葉変性症(FTLD-U)は、前頭側頭型認知症(FTD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)と関連している。最近、遺伝性FTLD-Uおよびユビキチン陽性神経細胞核内封入体(NII)患者で、プログラニュリン(PGRN)蛋白質の未熟不完全化を引き起こすと予想される遺伝子変異が発見された。
目的
FTD(A.III.1およびB.II.1)もしくはALS(C.III.1)の家族歴を持つ3群のFTD患者の臨床学的、病理学的および遺伝学的特徴を明らかにすること。
方法
患者には単一の臨床評価、MRIおよび18F-FDG PETを行った。また、神経病理学的検査と遺伝学的解析を行った。
結果
患者は臨床学的にFTDの行動の変化を呈した。言語機能は理解力が最も障害されていた。神経画像解析で、A.III.1およびB.II.1患者において、左側優位に、前頭側頭萎縮および糖代謝の低下が明らかとなった。C.III.1患者は軽度の萎縮と対称性に前頭の低代謝を示した。全患者が神経病理学的にFTLD-Uと診断された。ユビキチン陽性神経細胞核内封入体はA.III.1およびB.II.1患者には認められたが、C.III.1患者には認められなかった。IVS6-2A→G(A.III.1患者)、R493X(B.II.1患者)、R433W(C.III.1患者)のPGRN遺伝子変化が明らかになった。IVS6-2A→G変異ではエクソン7が飛び越され、その結果コード配列のフレームシフトが起き、PGRN遺伝子の翻訳が途中で終止する可能性がある。
結論
常染色体優性FTDの可能性がある家族の中でFTDを発症した患者で、FTDに関連した2種のPGRN遺伝子の変異を発見した。3番目の変異(R433W)はALSの家族歴のある患者1人で見つかった。
コメント
昨今の高齢社会で認知症は社会問題の一つであり、中でもFTDは頻度の多さとPGRN遺伝子の発見で注目されている。本論文はPGRN変異(truncating2例、missense1例)による遺伝性FTD(1例はALSの家族歴あり)の報告である。ALSの10%、FTDの約40%は遺伝子の異常で起こると言われている。遺伝性の場合、両者は一連のspectrumをもつ疾患群と考えられており、臨床的・病理学的に重なり合う部分がある。神経変性疾患を原因とする蛋白により種々のproteinopathyと分類する捉え方を応用して、この疾患群を分類することができる。一つは微小管関連蛋白タウをコードする遺伝子の変異により、タウが標的となり引き起こされるタウオパチーであり、他の一つは最近明らかになってきたが、本論文で示されたPGRNの変異による、ある種の蛋白(別の論文でTDP-43蛋白と判明)が標的となりユビキチン化により惹起されるものである。両者とも第17染色体長腕q21に連鎖している。本論文ではALS例でユビキチン陰性であり、神経変性機序との関連で興味がある。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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