ALS患者の病院利用と転帰の推移:米国の大規模コホートの分析から
Trends in hospital utilization and outcome for patients with ALS: analysis of a large U.S. cohort
R. Dubinsky, J. Chen, S. M. Lai
Department of Neurology, University of Kansas Medical Center, Kansas City, USA.
Neurology. 2006 Sep 12;67(5):777-80.
目的
米国の1988年から2002年までの大規模コホートデータを使って、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の病院における死亡率、病院の利用状況、および治療成績の推移を前半と後半に分けて分析する。
方法
1988〜2002年の全米入院患者データベース(Nationwide Inpatient Sample)を用いて、後向きコホート比較分析を行った。ICD-9疾病分類コードを用いて、入院時の合併症、および治療後の転帰を分類した。転帰について分析を行った項目は、入院理由、入院費用(2002年度ドルに調整)、入院期間、退院理由、およびホスピスケアの利用状況であった。統計学的有意性はp<0.001で判定した。
結果
分析データは17,249件であった。注目すべき結果を以下にあげる。第1に、合併症頻度は経過とともに増加していた。肺炎は38.1%から47.3%に、呼吸不全は26.9%から35.5%に、栄養欠乏症は43.0%から56.3%に増加していた。第2に、入院期間の中央値が6日から4日に短縮していた。第3に、病院費用の平均値が21,574ドルから24,314ドルに増加していた。第4に、在院中の死亡率は17.6%から14.6%に低下していた。しかし、在宅医療/ホスピスケアへの移行者の割合が14.0%から18.2%に、長期ケア施設転出者は13.2%から27.9%に増加していた。入院患者の死亡オッズ比(OR)は、呼吸不全患者では5.03(95% CI 4.57〜5.54)、肺炎患者では1.36(1.24〜1.50)と高く、栄養欠乏症患者では0.84(0.77〜0.92)と低値であった。
結論
肺炎、呼吸不全で入院した患者の死亡ORが高かったことは、進行した状態で入院していることと関連していると考えられた。栄養欠乏症の入院者のORが低かったのは、球麻痺症状優位性の病型であり、発症後早期に入院している者の割合が多い事実と一致していた。この15年間の政府データベースを使ったALS患者の分析から、合併症の頻度が増加していること、終末期医療の利用頻度が増えてきていることが明らかになった。
コメント
米国のALS入院患者の動向を分析した論文である。急性期病院は肺炎、呼吸不全の増悪時に短期間入院する傾向となっていた。合併症が落ち着くと早期に退院し、長期療養施設に転院するか、在宅で終末ケアを受けるようになっていた。これは、終末ケア体制が整ってきていることを示すものであるが、その背景には医療コストの問題があるのかもしれない。終末期のケア体制についてわが国にとっても示唆的な論文である。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 予防環境医学 高鳥毛 敏雄先生
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