乾癬症と糖尿病、動脈硬化症との関連の検討:イスラエルにおける症例対照研究
The association between psoriasis, diabetes mellitus, and atherosclerosis in Israel: a case-control study.
J. Shapiro, A. D. Cohen, M. David, E. Hodak, G. Chodik, A. Viner, E. Kremer, A. Heymann.
Maccabi Healthcare Services, Rabin Medical Center, Israel
Journal of the American Academy of Dermatology. 2007 Apr;56(4):629-34. Epub 2006 Dec 8
背景
これまで、乾癬症と心不全、糖尿病等の疾患との間に関連性があることが報告されている。
目的
イスラエルの患者においても、乾癬症と、糖尿病または動脈硬化症との間に関連性がみられるのかどうか検討する。
方法
イスラエルの大規模医療提供組織であるMaccabi Healthcare Services(MHS)における患者データベースを用いて、横断研究手法を用いて分析を行った。乾癬症と診断された者を症例群とした。糖尿病および動脈硬化症を有する患者とは、MHSの患者データベースにおいて糖尿病、心血管系疾患を有すると登録されている者とした。対照群は、乾癬症を有さないMHSの登録者とした。症例群と対照群における糖尿病と動脈硬化症の有病率を比較した。カテゴリー変数の有意差検定にはχ2検定を用いた。多変量解析にはロジスティック回帰モデルを用いた。
結果
乾癬症患者(症例群)は46,095例、乾癬を有さない者(対照群)は1,579,037例であった。症例群の糖尿病年齢調整有病率は、対照群に比べて有意に高かった(オッズ比[OR]1.27、95%信頼区間[CI]1.1〜1.48)。また、症例群の動脈硬化症の年齢調整有病率は、対照群に比べて有意に高かった(OR 1.28、95% CI 1.04〜1.59)。症例群においては、多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ、糖尿病とステロイド局所外用薬(p<0.05)および乾癬症に対する全身投薬治療(メトトレキサート、シクロスポリンまたはacitretin)(p<0.001)の薬剤の重複服用との関連がみられた。同様に、動脈硬化症と光線療法(p<0.001)受療との間にも関連がみられた。
制限
この研究には、コンピュータ登録データベースの患者情報に基づくものであるという限界がある。そのために三点のバイアスが入り込んでいる可能性がある。第一に、乾癬症の診断は入力されたデータに基づいて行っているため、過大評価(偽陽性症例)または過小評価(偽陰性症例)の可能性がある。第二に、医師の診療を求めてきた患者を対象としていることから、合併症を有する者が多くなっているために関連性がみられたという選択バイアスの結果である可能性がある。第三には、乾癬症の発症には動脈硬化症、糖尿病が原因として関与している可能性があり、そのために関連がみられた可能性がある。MHSデータベースに診断名が記録されたのは1997年以降であり、またデータベースには疾病発症日が記録されていないという制約もある。
結論
本研究は、乾癬症と動脈硬化症、糖尿病との間に関連があるというこれまでの報告を裏付けるものであった。しかし、この関連が真のものであるとするためにはさらなる研究が必要である。
コメント
乾癬症の患者では、一般の人と比べて糖尿病、動脈硬化症などの生活習慣病の有病率が高いということを、イスラエルの大規模医療施設の患者データを使って示したものである。しかし、症例対照研究はバイアスの入り込みやすい研究手法であるために、さらに裏付けとなる研究を積み重ねる必要がある。乾癬症の患者で糖尿病や動脈硬化症の有病率が高いとすると、一般の人々以上に食生活や運動など健康習慣に留意しないといけないのかもしれない。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 予防環境医学 高鳥毛 敏雄先生
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