早期多発性硬化症において軸索欠損は進行性であり、部分的に異常病変の全体量との解離がある
Axonal loss is progressive and partly dissociated from lesion load in early multiple sclerosis.
Pascual AM, Martínez-Bisbal MC, Boscá I, Valero C, Coret F, Martínez-Granados B, Marti-Bonmati L, Mir A, Celda B, Casanova B.
Department of Neurology, Hospital Universitario La Fe, Valencia, Spain.
Neurology. 2007 Jul 3;69(1):63-7.
目的
早期の再発寛解型多発性硬化症(RRMS)患者において、正常な外観を呈する脳幹白質の分光学的に測定した軸索損傷、および全脳のT2強調病変容積(T2LV)と、能力障害との関連について検討した。
方法
RRMS患者43例と性別および年齢をマッチさせた対照健常者10例を対象に、2年間の前向き研究を行った。登録時と2年目にT2強調磁気共鳴(MR)画像およびプロトンMRスペクトロスコピーを取得した。大きな神経伝導路が集まる脳幹を、早期の軸索損傷検出のための適切な領域とみなした。T2LVは半自動プログラムを用いて算出した。N-アセチルアスパラギン酸(NAA)、クレアチン(Cr)、およびコリン(Cho)共鳴域はjMRUIプログラムによって統合し、脳幹で示された体積要素の合計を求めるために比率を算出した。
結果
RRMS患者における基礎のNAA/Cho比は、対照健常者に比べて有意に低かった。2年間の観察期間後、多発性硬化症患者においてNAA/Cho比(−9%; p=0.002)とNAA/Cr比(−13%;p=0.001)の低下およびT2LV(19%;p=0.043)の増加が認められたが、対照健常者においては有意な代謝変化は認められなかった。再発または未再発両方の患者でNAA/Cr比の有意な低下が認められたが、T2LVは再発患者のみで増加した。最終的な総合障害度評価尺度(EDSS)スコアはベースラインのT2LVに相関したが、研究期間を通じて代謝値、T2LVの変化またはEDSSスコアの間に有意な相関は認められなかった。
結論
再発寛解型多発性硬化症において早期および進行性の軸索損傷が認められた。軸索欠損とT2病変容積は、本疾病の初期段階において少なくとも部分的に解離したプロセスであると考えられる。
コメント
MSは脱髄疾患と言われているが、軸索変性の関与が指摘される場合もあり、その一つに、MSで最も多いRRMSが二次進行型MSへの移行時の特徴と言われている。本論文は、プロトンMRスペクトロスコピーによりRRMSで早期から軸索変性が存在することを指摘すると同時に、臨床症状との解離を指摘したものである。早期からの軸索変性の病的意味づけ、T1画像で低信号を呈するいわゆるブラックホールとの関連、脳幹以外の部位での検討等が今後必要であろう。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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