システイニルロイコトリエンの生合成に関与するヒト膜蛋白質の結晶構造
Crystal structure of a human membrane protein involved in cysteinyl leukotriene biosynthesis
Ago H, Kanaoka Y, Irikura D, Lam BK, Shimamura T, Austen KF, Miyano M.
Structural Biophysics Laboratory, RIKEN SPring-8 Center, Harima Institute, Hyogo, Japan.
Nature. 2007 Aug 2;448(7153):609-12. Epub 2007 Jul 15.
背景
システイニルロイコトリエン、すなわちロイコトリエン(LT)C4およびその代謝物LTD4、LTE4は、アナフィラキシー遅延反応性物質の構成成分で、平滑筋収縮および炎症、特に気管支喘息の脂質メディエーターである。LTC4生合成にとって重要な酵素であるLTC4合成酵素(LTC4S)は、18-kDaの核膜内在性蛋白質であり、5‐リポキシゲナーゼ活性化蛋白質、ミクロソームグルタチオンS‐トランスフェラーゼ(MGST)およびミクロソームプロスタグランジンE合成酵素1を含むエイコサノイドおよびグルタチオンの代謝における膜関連蛋白質スーパーファミリーに属している。LTC4Sは、5‐リポキシゲナーゼ経路を介して、アラキドン酸由来の生体内基質であるLTA4にグルタチオンを結合させる。MGST2およびMGST3と異なり、LTC4Sは生体異物にグルタチオンを結合させない。
方法
本稿では、グルタチオンとの複合体でのヒトLTC4Sの原子構造を、3.3Åの解像度のX線結晶構造解析により示し、LTC4Sと他のMGSTとを区別するグルタチオンおよびLTA4に関する高い基質特異性を理解するうえでの手掛かりを与える。
結果
LTC4Sの単量体には、4つの膜貫通α−へリックスがあり、各接触面を交差する機能ドメインを有する単位として3分子が対称の三量体を形成している。グルタチオンは隣接する単量体との間の接触面内でU字型の構造をとっており、この結合は接触面の先端のループ構造により安定化されている。LTA4はこの接触面にぴったり収まり、1つの単量体の104番目のアルギニンがグルタチオンを活性化し、LTA4のC6を攻撃するチオレートアニオンを供与し、チオエーテル結合が形成され、また隣接する単量体の31番目のアルギニンがプロトンを供与し、C5のヒドロキシル基が形成され、その結果5(S)-hydroxy-6(R)-S-glutathionyl-7,9-trans-11,14-cis-eicosatetraenoic acid(LTC4)が合成されると考えられる。
結論
本研究の知見は、安定性および作用強度の異なる3種類のシステイニルロイコトリエンリガンドや、機能が重複していないと考えられる複数のシステイニルロイコトリエン受容体が介している炎症性経路に関するLTC4S阻害剤の開発に構造的根拠を与えている。
コメント
アラキドン酸からleukotrieneを含んだ炎症メディエーターへの合成系にcyclooxygenesis(Cox)が関与し、Cox1とCox2が知られている炎症抑制に、Cox1あるいはCox2の阻害剤が繁用され、特にリウマチ等の慢性炎症にはCox2特異的阻害剤が新しく開発されている。気管支喘息の場合、特にleukotrieneの阻害剤の開発が望まれているため、これら2つの研究結果は、結晶構造に基づいた阻害薬の開発によい情報を提供している。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 身体防御健康医学 吉崎 和幸先生
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