多発性硬化症病変におけるマクロファージ阻害分子のダウンレギュレーション
Downregulation of macrophage inhibitory molecules in multiple sclerosis lesions
N. Koning, MSc, L. Bö, MD, PhD, R. M. Hoek, PhD, I. Huitinga, PhD
Netherlands Institute for Neuroscience, VU Medical Center, Amsterdam, the Netherlands.
Annales of Neurology. 2007 Sep 19
目的
活性化された在住マクロファージ(ミクログリア)およびリクルートされた血中マクロファージの炎症および脱髄活性は、多発性硬化症(MS)の発症において重要と考えられている。神経細胞において発現の高い膜糖蛋白質CD200およびCD47は、骨髄細胞上のそれぞれのレセプターCD200Rおよびsignal-regulatory protein αを介するマクロファージ阻害のメディエーターである。マクロファージの活性化およびMS病巣病理に関与する免疫抑制分子について遺伝子の発現パターンを調べた。
方法
レーザーマイクロダイセクション法とリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を組み合わせて、慢性活動性および非活動性のMS病変の特定部位(辺縁部、中央部および正常に見える白質)における上記の遺伝子発現パターンを定量的に調べた。
結果
グリア線維性酸性蛋白質、ニューロフィラメント(NF)、ミエリン塩基性蛋白質、成長因子、ケモカインおよびそのレセプター、ならびにマクロファージ活性化マーカーのmRNAの発現パターンにより、MS病理の特徴が確認された。ただし、オステオポンチンおよびαB-クリスタリンの発現は減少していた。CD200およびCD47は、慢性活動性および非活動性のMS病変中央部においてダウンレギュレーションされていた。CD47の発現は、補体の発現が増加している慢性活動性のMS病変辺縁部においても減少していた。この発現プロファイルは慢性活動性の病変周辺の正常に見える白質においても認められたが、非活動性の病変周辺の白質では認められなかった。CD200Rおよびsignal-regulatory protein αの発現は変化しなかった。
結論
本研究のデータは、CD200およびCD47の発現の減少を介する免疫抑制の低下が、MS病変におけるマクロファージとミクログリアの活性化の平衡を乱していることを示唆している。さらに、これにより慢性活動性の病変周辺部における炎症誘発が招かれ、その結果、軸索損傷、脱髄、およびおそらく病変拡大の原因になると考えられる。
コメント
MS病巣で免疫抑制調節分子のCD200とCD47が減少していることを指摘した最初の報告である。免疫により保護されている中枢神経系が、CD200、CD47とその受容体を介するマクロファージやミクログリアの活性化の平衡障害により免疫が破壊され、脱髄や軸索変性が時間的・空間的多様性を持って出現することを指摘している。他方、CD200およびCD47の受容体には変化がなく、受容体側細胞の制御は治療に繋がる可能性もあり、今後の研究がまたれる。免疫系と神経系との連関の深さと神秘さを感じる。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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