日本における抗NMDA受容体脳炎:腫瘍非摘出での長期転帰
Anti-NMDA receptor encephalitis in Japan: long-term outcome without tumor removal
T. Iizuka, MD, F. Sakai, MD, T. Ide, MD, T. Monzen, MD, S. Yoshii, MD, M. Iigaya, MD, K. Suzuki, MD, D.R. Lynch, MD, PhD, N. Suzuki, MD, T. Hata, MD, J. Dalmau, MD, PhD
Department of Neurology, School of Medicine, Kitasato University, 1-15-1 Kitasato, Sagamihara, Kanagawa, 228-8555, Japan
Neurology 2008 Feb 12;70(7):504-11.
目的
過去に原因不明の「若年性急性非ヘルペス性脳炎」と診断された日本人女性4人における抗NMDA受容体(NMDAR)脳炎の確定診断を報告し、腫瘍非摘出での長期追跡調査について記述する。
方法
現行の臨床評価および臨床検査(発症時(4〜7年前)および現時点における、血清/CSF中のNMDAR NR1/NR2ヘテロマーに対する抗体の検査を含む)の結果が入手できた症例の病歴を詳細に検討した。
結果
すべての患者が、前駆症状、精神症状、低換気、重度の口腔顔面ジスキネジアおよび免疫療法抵抗性の異常な不随意運動などの一連の症状を呈し、それらは1〜12カ月持続した。2人の患者は6カ月および9カ月間の人工換気を必要とした。初回検査の結果は正常または不明で、非特異的なCSF髄液細胞増加所見および脳MRI上の正常または軽度の変化などが認められた。1人の患者が全身性合併症により両下肢を切断したが、最終的にはすべての患者で認知機能が急激に回復した。NR1/NR2ヘテロマーに対する抗体が保存血清またはCSFで認められたが、長期追跡サンプルでは認められなかった。後に3人の患者に卵巣奇形腫が認められた(すべて病理学的に確認された)。
結論
1)本稿の所見は、「若年性急性非ヘルペス性脳炎」またはこの疾患のサブセットには、NMDA受容体(NMDAR)のNR1/NR2ヘテロマーに対する抗体に関連した免疫応答が関与していることを示唆している。2)本症例の臨床的特徴は、抗NMDA受容体脳炎は重篤であるが改善の可能性があること、また卵巣奇形腫発見に数年先行する場合があることを示している。3)腫瘍を摘出することなく回復する可能性があるが、重症度および長期にわたる症状を考慮すると腫瘍の摘出が推奨される。
コメント
非ヘルペス性辺縁系脳炎の病態の一つに自己免疫機序が考えられているが、今回の報告は若年女性の抗NMDA受容体抗体陽性脳炎例で後に卵巣奇形腫が判明したものである。著者の一人のDalmauが昨年報告した脳炎であるが、筆頭著者らの過去の類似経験例(日本例)を、その保存血清/髄液の検査で抗NMDA抗体陽性脳炎と確定診断した報告である。他の自己抗原との関係や、卵巣奇形腫との関係など、検討すべきものは多いと考えられるが、昨年私も同様の脳炎を経験し、経過観察中にDalmauの論文を読み、検索の結果、卵巣奇形腫が判明した1例を経験した。臨床観察と症例蓄積の重要性を思い知らされたため、難病の論文ではないが取り上げた。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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