低分子サイクリン依存性キナーゼ阻害薬による関節リウマチモデル動物の治療
Successful treatment of animal models of rheumatoid arthritis with small-molecule cyclin-dependent kinase inhibitors
Sekine C, Sugihara T, Miyake S, Hirai H, Yoshida M, Miyasaka N, Kohsaka H.
Clinical Immunology, RIKEN Research Center of Allergy and Immunology, Yokohama, Japan
The Journal of Immunology, 2008 Feb 1;180(3):1954-61
背景
滑膜細胞の細胞周期を抑制するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬の関節内への遺伝子導入は、関節リウマチモデル動物の治療で有効性が示されている。内因性のCDK阻害薬はまた、CDK非依存性の経路を介しても免疫機能を調節する。そのため、低分子のCDK阻害薬の全身投与で関節炎が改善する場合と改善しない場合とがある。
方法
この問題を検討するため、がん治療で忍容性が明らかとなっているalvocidib(フラボピリドール)、および新たに合成したCDK4/6選択的阻害薬の抗関節炎効果について調べた。
結果
両薬はin vitroでアポトーシスを誘導することなくヒトおよびマウスの滑膜線維芽細胞の増殖を阻害した。またin vivoでは、alvocidibによるマウスのコラーゲン誘発性関節炎に対しては、滑膜肥厚および関節破壊が抑制された一方で、血清中抗II型コラーゲン(CII)抗体濃度は低下せず、CIIに対するリンパ球の増殖応答は維持され、免疫反応の抑制はみられなかった。治療薬として投与した場合にも、関節炎に対して有効性がみられた。マウスへの投与を中止すると関節炎が再発したことより、CIIに対する免疫反応は失われていなかった。リンパ球欠損マウスにK/BxNマウス血清移入により誘導した関節炎は、alvocidibの治療で改善された。同様に、CDK4/6選択的阻害薬もコラーゲン誘発性関節炎を抑制した。
結論
低分子CDK阻害薬はいずれも、関節リウマチモデル動物の治療にリンパ球機能を抑制することなく有効性を示した。このように、これら2つの低分子CDK阻害薬は、他の免疫抑制薬とは異なる機序で関節炎モデルを改善した。
コメント
関節リウマチの治療は、サイトカイン、リンパ球表面抗原等に対する抗体等の生物製剤による新しい有効な治療法の出現により、現在大変革が生じている。これらの治療薬は関節リウマチの関節部の炎症を抑制するばかりでなく、全身の免疫反応も抑制する可能性があり、例えば感染症にかかりやすい等の有害事象も認められる。本CDK阻害薬は免疫機能を抑制することなく、次世代の治療法を示唆するものである。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
PudMed: