脂質代謝異常は筋萎縮性側索硬化症の保護因子である
Dyslipidemia is a protective factor in amyotrophic lateral sclerosis
L. Dupuis, PhD, P. Corcia, MD, A. Fergani, MSc, J.-L. Gonzalez De Aguilar, PhD, D. Bonnefont-Rousselot, PharmD, PhD, R. Bittar, PharmD, D. Seilhean, MD, PhD, J.-J. Hauw, MD, PhD, L. Lacomblez, MD, J.-P. Loeffler, PhD, V. Meininger, MD, PhD
Fédération des Maladies du Système Nerveux, Centre référent maladie rare SLA, Hôpital de la Pitié-Salpêtrière, 47-83, Boulevard de l'Hôpital, 75651 Paris, France.
Neurology 2008 Mar 25;70(13):1004-9.
背景
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は成人における運動ニューロン変性疾患の最も重篤型であり、上位および下位運動ニューロンの変性、骨格筋萎縮、麻痺および死亡を特徴とする。栄養障害および体重減少の高い有病率はQOLに悪影響を及ぼす。さらに、患者の3分の2は原因不明の代謝亢進をきたし、安静時のエネルギー消費が増加する。脂質は筋肉の主なエネルギー源なので、ALS患者集団における脂質の状態を明らかにし、脂質量が疾患の進行および生存に影響を及ぼすか否かを調べた。
方法
ALS患者369例のコホートにおいて、トリグリセリド、コレステロール、低比重リポ蛋白質(LDL)および高比重リポ蛋白質(HDL)の血中濃度を測定し、健常被験者286例の対照群と比較した。他のALS患者59例およびパーキンソン病(PD)患者16例の剖検後の肝臓検体について組織学的検査を行った。
結果
ALS患者において、総コレステロールまたはLDLの血漿濃度の増加により認める高脂血症の頻度は、対照被験者の2倍であった。その結果、脂肪肝はPD患者よりALS患者において顕著であった。相関研究により、異常に高いLDL/HDL比を有することは生存期間を12カ月以上有意に延長することが示された。
結論
高脂血症はALS患者の生存期間の重要な予後因子である。この知見は、疾患進行に対する栄養療法戦略の重要性を浮き彫りにしており、抗高脂血症薬によるALS患者の治療に対して注意を促すものである。
コメント
以前よりALSの予後因子としての栄養の重要性は指摘されてきており、私ども臨床家は嚥下障害が強い場合の栄養補給法に苦慮してきた。今回の報告は、ALSにおいて、triggerは不明であるが病態の一つとして高脂血症があり、さらにそれが生命予後と相関する、つまり高脂血症がALSの予後因子であるというものである。ALSに対する栄養療法の再考、および高脂血症治療薬の安易な使用に対する警告を促す興味ある論文である。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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