c-Fos/STAT3/HNF-1α転写複合体の形成はサイトカインによるC反応性蛋白遺伝子発現に必須
Transcriptional Complex Formation of c-Fos, STAT3, and Hepatocyte NF-1{alpha} Is essential for Cytokine-Driven C-Reactive Protein Gene Expression
Nishikawa T, Hagihara K, Serada S, Isobe T, Matsumura A, Song J, Tanaka T, Kawase I, Naka T, Yoshizaki K.
Health Care Center, Osaka University
The Journal of Immunology 2008 Mar 1;180(5):3492-501
背景
C反応性蛋白(CRP)は炎症の高感度なマーカーでありかつメディエータであるが、一方インターロイキン(IL)-6阻害療法は慢性炎症性疾患の血清CRP濃度を正常化させることができる。
目的
肝細胞由来のHep3B細胞を用いて、IL-1およびIL-6による相乗的なCRP遺伝子発現誘導機序を詳細に調べた。
結果
誘導期の初期には、IL-1はIL-6を介したCRP遺伝子発現を阻害し、NF-κB p65はSTAT3の過剰発現下においてもIL-1+IL-6によるpGL3-CRPのルシフェラーゼ活性を阻害した。誘導期の後期には、IL-1により活性化されるJNKおよびp38に着目したところ、SP600125はIL-1+IL-6により誘導されるCRP遺伝子発現を抑制した。驚くべきことに、CRP遺伝子はプロモーター中にAP-1応答エレメント(RE)を持たないにもかかわらず、c-Fosを過剰発現させるとIL-1およびIL-6によるルシフェラーゼ活性が劇的に増強された。このc-Fosによる増強効果にはSTAT3 REおよび3'側hepatocyte NF-1(HNF-1)REが必要であり、これらの活性はそれぞれドミナントネガティブSTAT3およびHNF-1αによって消失した。SB203580はIL-1+IL-6により亢進したc-Fosのリン酸化を阻害し、CRP遺伝子発現を減少させた。免疫沈降、ウエスタンブロット解析、STAT3 REおよび3'側HNF-1 REを含むCRPオリゴヌクレオチドを用いたスーパーシフトアッセイ、およびクロマチン免疫沈降アッセイにより、c-Fos/STAT3/HNF-1αはCRP遺伝子プロモーター上で複合体を形成することが示された。c-Fos/STAT3/HNF-1αを発現できないヒト胎児肝細胞においてはCRP産生がみられなかったことから、c-Fos/STAT3/HNF-1αという転写複合体の形成はIL-1+IL-6による相乗的なCRP遺伝子発現誘導に必須である。
結論
サイトカインによるCRPの発現機序を転写レベルで初めて明らかにした。特にIL-6は発現増加に、IL-1は初期では抑制的に、後期では相乗的に作用することが明らかとなった。
コメント
臨床医ならばCRPは炎症のマーカーであることを知らない者はいない。しかしながら、どのような機序で発現するのかはまったく不明であった。本研究によりサイトカイン、特にIL-6がCRP発現にもっとも中心的に作用することが明らかとなった。臨床の検査所見の中には、発現機序が不明であるが頻用されているものもある。今回、長年不明であった機序が明らかとなったことは大きいことである。さらにIL-6がその作用の中心であることを示し、他のサイトカインと作用が異なることを示している。今回の結果は、IL-6阻害療法の臨床転帰を十分に説明するものであり、慢性炎症性疾患のための治療戦略の開発に役立つことが期待される。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
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