前頭側頭葉変性症および筋萎縮性側索硬化症におけるリン酸化TDP-43
Phosphorylated TDP-43 in frontotemporal lobar degeneration and amyotrophic lateral sclerosis
Masato Hasegawa, PhD, Tetsuaki Arai, MD, PhD, Takashi Nonaka, PhD, Fuyuki Kametani, PhD, Mari Yoshida, MD, PhD, Yoshio Hashizume, MD, PhD, Thomas G. Beach, MD, PhD, Emanuele Buratti, PhD, Francisco Baralle, MD, PhD, Mitsuya Morita, MD, PhD, Imaharu Nakano, MD, PhD, Tatsuro Oda, MD, PhD, Kuniaki Tsuchiya, MD, PhD, Haruhiko Akiyama, MD, PhD
MDepartment of Molecular Neurobiology, Tokyo Institute of Psychiatry, Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, Kamikitazawa, Setagaya-ku, Tokyo.
Annals of Neurology. 2008 Jun 10.
目的
43 kDaのTAR DNA結合蛋白質(TDP-43)は、ユビキチン陽性封入体を伴う前頭側頭葉変性症(FTLD-U)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の脳において細胞質および核内封入体として沈着している。これまでの研究で、沈着したTDP-43に異常なリン酸化が生じることが報告されている。本研究の目的は、リン酸化部位および関与するキナーゼを同定すること、およびTDP-43のリン酸化の病理学的な重要性を明らかにすることであった。
方法
TDP-43のリン酸化ペプチドを免疫することによりリン酸化TDP-43に特異的な複数の抗体を作製し、免疫組織化学、免疫電子顕微鏡および免疫ブロットによりFTLD-UおよびALSの脳を分析した。さらに、関与するキナーゼの同定を目的とした研究を行い、TDP-43のオリゴマー形成および線維化にリン酸化がどのように影響を及ぼすかについて検討した。
結果
沈着したTDP-43のカルボキシ末端領域に複数のリン酸化部位を同定した。リン酸化特異的抗体は、ユビキチンに対する抗体よりも多くの封入体を染色し、既存の市販の抗TDP-43抗体と異なり、正常な核は染色しなかった。超微細構造的に、本抗体は直径15nmの異常な線維を標識し、免疫ブロットではFTLD-UおよびALSの脳に由来するサルコシル不溶性画分において18〜26kDaのフラグメントに加えて45kDaの高リン酸化TDP-43を認識した。リン酸化エピトープはカゼインキナーゼ-1および2により産生され、リン酸化によりTDP-43のオリゴマー形成および線維化が促進された。
結論
以上の結果より、リン酸化TDP-43は封入体の主要な構成分子であり、TDP-43の異常なリン酸化はFTLD-UおよびALSの病変形成において重要な段階であることが示唆される。リン酸化特異的抗体はこれらの疾患の研究に強力なツールになると考えられる。
コメント
2006年にNeumannら、著者らが、FTLDとALSの中枢神経に共通して出現するユビキチン陽性封入体の主要構成成分のTDP-43蛋白とその異常リン酸化を初めて報告した。以後、前頭側頭葉変性症の病理学的分類は新たな展開に突入しているが、重要なことは、以前に当UPDATEで紹介したprogranulinと共に、両疾患の発症機序解明に重要な蛋白であると考えられていることである。本論文はTDP-43蛋白に対する特異抗体を作製することにより、リン酸化の部位およびキナーゼを検索したものであるが、今後本抗体を使用しての病因解析の進行が待たれる。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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