在宅血液透析:その導入は国々の間で大きなばらつきがある。遅れをとった英国
Home haemodialysis
Wide variations in availability exist, and the UK lags behind some other countries
Christopher R Blagg
University of Washington and Northwest Kidney Centers, Seattle, USA
BMJ. 2008 JANUARY 5 ;336(7634): 3-4
在宅血液透析は、1960年代初頭に米国および英国で開始された。1971年には、英国で透析患者の58.8%、米国で32.2%が在宅で透析を行っており、その多くは夜間週3回であった。ところが2005年には、在宅透析の患者数はわずかに英国で2.7%、米国で0.6%であった。「適格患者全員が、在宅透析または病院/サテライト施設での(血液)透析を選択できるようにすべきである」と英国の国立保健医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence:NICE)が最近のガイドラインで勧告しているにもかかわらず、英国での利用率は低い。在宅透析の適応患者の割合は、約5〜20%と推定されている。しかし2006年の時点で、英国で在宅透析を提供する44施設での実際の利用は患者のわずか0.6〜11.1%であり、それ以外の21施設には在宅透析のプログラムが提供されていない。このようなばらつきは米国でも同様である。2004年に在宅透析を受けていたのは、32州の血液透析患者中0.2〜2.4%であり、18州では在宅透析の患者はいない。在宅透析は、病院またはサテライト施設で外来患者に提供される血液透析に比べ、生存率、生活の質(QOL)、およびリハビリテーションの機会を改善し、費用対効果も高い。また、長時間の夜間透析は、リン吸着剤が不要となる程度までリン濃度を改善し、有毒な分子のクリアランスも増加させる。欠点としては、装置や消耗品を置くスペースが必要であること、配管工事や電気工事を要することがある、水道光熱費が増加する、治療中に介助者が自宅にいる必要がある、などが挙げられている。在宅透析の利用が減少している背景には、高齢患者および合併症を有する可能性が高い糖尿病患者の割合の増加、患者教育の不足、腎臓専門医、看護師、ソーシャルワーカー、および管理者の経験不足、ならびに多くの透析施設で利用可能なプログラムがないことなどが挙げられる。米国では、在宅透析や頻回の(血液)透析が増加し始めている。これは、米国の全透析患者の約3分の2にケアを提供している企業2社が在宅透析の提供に乗り出したことが契機となっている。米国の在宅透析患者数は、2004〜2005年に7%増加し、2006年以降さらに20〜30%増加していると思われる。一方英国では、NICEガイドラインでは在宅透析の推進を勧奨しているが、英国内科医師会(Royal College of Physicians)および英国腎臓学会(Renal Association)による2007年の報告では在宅透析を支持する方針が示されていない。各国の導入状況を踏まえ、在宅透析の利用可能性について再評価することが求められる。
コメント
今回は、在宅の透析医療の普及に関する報告論文を紹介した。近年、透析患者が増加している。英国は近年劇的な保健医療制度改革を行った国で、医療サービスの質を保つために様々なガイドラインをつくる作業をしているのがNICEという専門組織である。在宅透析の有用性とその普及を勧告しているが、医師やコメディカルスタッフの体制が整っていないためか、他の国に遅れをとっているとのことである。わが国はどのような状況にあるのか、英国以上に遅れているのではないだろうか。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 健康政策学 高鳥毛 敏雄先生