抗TNFα療法に反応する関節リウマチ患者における心筋梗塞発生率の低下:British Society for Rheumatology Biologics Registerから得られた結果
Reduction in the incidence of myocardial infarction in patients with rheumatoid arthritis who respond to anti-tumor necrosis factor alpha therapy: results from the British Society for Rheumatology Biologics Register.
Dixon WG, Watson KD, Lunt M, Hyrich KL; British Society for Rheumatology Biologics Register Control Centre Consortium, Silman AJ, Symmons DP; British Society for Rheumatology Biologics Register.
University of Manchester, Manchester, UK.
Arthritis and Rheumatism 2007 Sep;56(9):2905-12.
目的
関節リウマチ(RA)は冠動脈疾患のリスク上昇と関連しているが、両者はおそらく共通の炎症機序を介している。本研究の目的は、抗TNFα療法の強力な抗炎症効果によりRA患者の心筋梗塞(MI)発生率が低下する、という仮説の検証であった。
方法
英国国内の前向き観察研究であるBritish Society for Rheumatology Biologics Registerのデータを用いて、抗TNFα薬の投与を受けたRA患者8,670例におけるMI発症率と、従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の投与を受けた活動性RA患者2,170例におけるMI発症率の比較を行った。
結果
2006年7月までに、抗TNFα薬コホートでは13,233人・年の追跡調査期間中に63件のMIが、DMARDコホートでは2,893人・年の追跡調査期間中に17件のMIが発生し、これらはそれぞれ1,000人・年当り4.8件および5.9件の発生率に相当していた。ベースライン時の危険因子で補正すると、抗TNFα薬コホートのMI発生率はDMARDコホートに比べ低いものではなくなった(発生率比1.44[95%信頼区間0.56〜3.67])。6カ月以内に治療に反応した抗TNFα薬投与患者と反応しなかった患者との比較解析から、反応例のMI発生率は1,000人・年当り3.5件、非反応例のMI発生率は1,000人・年当り9.4件であることが明らかとなった。反応例の非反応例に対する補正発生率比(95%信頼区間)は0.36(0.19〜0.69)であった。
結論
これらの結果から、抗TNFα薬投与RA患者のMI発生率は、従来のDMARDの投与を受けたRA患者に比べ低くはないことが示されている。しかしMIのリスクは、6カ月目までに抗TNFα療法に反応した患者の方が、非反応例よりも著しく低い。この結果は、炎症がMIにおいて重要な役割を果たしているという考え方を裏づけるものである。
コメント
関節リウマチ(RA)にともなう冠動脈疾患のリスク上昇は、血管の炎症による動脈硬化の結果により生じると考えることもできる。TNFα療法によって炎症反応を抑制することによりMIリスクを低下させる可能性が示唆され、TNFα療法によるRA治療の付加価値を上げる可能性がありそうである。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
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