水疱性類天疱瘡と尋常性天疱瘡―英国における発生率および死亡率:地域コホート研究
Bullous pemphigoid and pemphigus vulgaris—incidence and mortality in the UK: population based cohort study
Langan SM, Smeeth L, Hubbard R, Fleming KM, Smith CJ, West J.
Centre of Evidence-based Dermatology, University of Nottingham, Queen's Medical Centre, Nottingham.
BMJ. 2008 July 9 ;337(a180).
目的
英国における水疱性類天疱瘡および尋常性天疱瘡の発生率および死亡率を評価することを目的とした。研究は、英国の大規模な地域ベースの一般医の診療データベースであるHealth Improvement Networkの電子カルテ情報を用いた後向きコホート研究として行った。
方法
診断コードが尋常性天疱瘡または水疱性類天疱瘡の患者をケース患者とし、このケースに対して年齢、性別、および一般医をマッチさせた対照群を用いて分析を行った。天疱瘡患者の発生率および死亡率を、患者の発症暦年、年齢群、性別、地域、社会的困窮度により対照集団と比較した。データベースの中から水疱性類天疱瘡患者869例と尋常性天疱瘡患者138例が特定された。水疱性類天疱瘡患者の診察時の年齢中央値は80歳(範囲23〜102歳)で、534例(61%)が女性であった。一方、尋常性天疱瘡患者の診察時の年齢中央値は71歳(21〜102歳)で、91例(66%)が女性であった。
結果
水疱性類天疱瘡と尋常性天疱瘡の発生率はそれぞれ、100,000人・年あたり4.3(95%信頼区間[CI]4.0〜4.6)、0.7(95%CI 0.6〜0.8)であった。水疱性類天疱瘡の発生率は年々上昇しており、毎年平均17%上昇していた(発生率比1.2、95%CI 1.1〜1.2)。一方、尋常性天疱瘡の発生率は、毎年平均11%上昇していた(発生率比1.1、95%CI 1.0〜1.2)。また、水疱性類天疱瘡患者の死亡リスクは対照群の2倍であった(補正ハザード比2.3、95%CI 2.0〜2.7)。尋常性天疱瘡患者では、死亡リスクは対照群の3倍であった(補正ハザード比3.3、95%CI 2.2〜5.2)。
結論
水疱性類天疱瘡と尋常性天疱瘡の発生率は上昇していた。発生率上昇の原因は明確に解明されていない。発生率の上昇に関係する要因は、高い死亡リスクに関連する因子の特定の手掛かりとなるものと思われる。これらの疾患に関連する死亡リスクはこれまで過小評価されてきたように思われる。
コメント
英国では国民はかかりつけ医(一般医)を決めてその医師に登録して医療サービスを受ける仕組みとなっている。登録患者の医療情報をデータベース化し、地域の医療ニーズを把握するとともに患者に対する医療の質の評価を行う活動が進められてきている。本論文は、全国の一般医が管理している患者情報データベースを用いて、稀少疾患である天疱瘡の発生状況、転帰を分析したものである。わが国では膨大な地域の患者情報をもとに疫学状況を把握することは患者情報が医療機関に分散しているために難しいが、一部の稀少疾患については特定疾患として公費負担制度があり、そのデータベース情報を活用することにより同様の研究は可能であると思われる。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 健康政策学 高鳥毛 敏雄先生
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