プラセボ薬を用いた治療の実態:米国の内科医とリウマチ専門医の全国調査結果から
Prescribing "placebo treatments": results of national survey of US internists and rheumatologists
Tilburt JC, Emanuel EJ, Kaptchuk TJ, Curlin FA, Miller FG.
Department of Bioethics, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA
BMJ. 2008 Oct 23;337:a1938. doi: 10.1136/bmj.a1938
目的
内科医のプラセボ薬を使った治療に対する態度や行動を明らかにする。プラセボ薬を用いた治療とは、ベネフィットが薬物による生理学的機序によるものではなく、患者の服薬することによる積極的な治癒の期待感に起因する治療法と定義される。
方法
米国の1,200名の臨床の内科医およびリウマチ専門医を対象として、プラセボ薬を用いた診療に関する自己報告に基づく態度と行動に対する調査を行った。主要な内容はプラセボ薬を用いた治療に関する態度および見方であり、「プラセボ治療」を利用しているかどうか、または勧めたことがあるかどうか、この治療行為に関する倫理的判断、プラセボ薬としてどのような薬剤を推奨するか、この治療行為について通常患者にどのように伝えているか、といったものであった。
結果
679名(57%)の医師から回答を得ることができた。調査対象の内科医およびリウマチ専門医の約半数が、日常的にプラセボ薬を処方していると報告した(項目により46〜58%)。ほとんど(399名、62%)の医師が、この治療行為を倫理的に許容できると考えていた。過去1年間にプラセボ薬として生理食塩液(18名、3%)または砂糖錠剤(12名、2%)を用いたと報告した医師はわずかであったが、プラセボ薬として市販の鎮痛薬(267名、41%)およびビタミン剤(243名、38%)を用いたと報告した医師は大部分を占めていた。同期間においてプラセボ治療として抗菌薬(86名、13%)および鎮静薬(86名、13%)を用いたと報告した医師の割合は低かった。さらに、プラセボ薬を利用する医師が患者に対して行う説明として最も多かったものは、「大変よく効く薬である」または「一般的には使われていない薬物である」(241名、68%)というものであった。はっきりとプラセボ薬であることを説明している医師はまれであった(18名、5%)。
結論
米国の内科医およびリウマチ専門医の間では、プラセボ薬の処方は多く行われている状況にあった。倫理的に許容できると考えられていると思われる。最も多く用いられている薬物はビタミン剤と市販の鎮痛薬であった。医師はプラセボ薬の使用について患者にはっきりと説明していないと思われ、またこのような治療を勧める動機は複雑であった。
コメント
医学が進歩したと言っても、まだまだ患者の病気を治す効果的な薬剤がないことも多い。だからといって、医師が効く薬がないからといって何も投与しないと、患者は医師に見捨てられたと落胆し、病気と闘う気持ちが萎えさせてしまうことになる。本論文は、患者との関係を重視し、癒し人としての臨床医のツールとしてプラセボ薬が多く用いられている実態を示すものである。米国の論文であることが興味深い。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 健康政策学 高鳥毛 敏雄先生
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