脳脊髄液タウ蛋白の形状は進行性核上性麻痺の信頼できるバイオマーカーである
Tau forms in CSF as a reliable biomarker for progressive supranuclear palsy
AB. Borroni, MD M. Malinverno, PhD F. Gardoni, PhD A. Alberici, MD L. Parnetti, MD, PhD E. Premi, MD U. Bonuccelli, MD M. Grassi, PhD D. Perani, MD P. Calabresi, MD, M. Di Luca PhD A. Padovani, MD, PhD
Centre for Aging Brain and Dementia, Department of Neurology, University of Brescia, Italy
Neurology. 2008 Nov 4;71(19):1796–1803
目的
脳脊髄液(CSF)中には、伸長型(55kDa)タウ蛋白と短縮型(33kDa)タウ蛋白が存在することが既に認められており、進行性核上性麻痺(PSP)では、他の神経変性疾患に比べてタウ蛋白の33kDa/55kDa比が有意に低下することが明らかにされている。本研究の目的は、PSPのバイオマーカーとしてのCSFタウ蛋白形状比の診断的意義を評価すること、またvoxel-based morphometry(VBM)により測定した解剖学上の構造的変化とCSFタウ蛋白形状比の低下との相関を検討することであった。
方法
本研究には合計166例の被験者を組み入れた(PSP 21例、大脳皮質基底核変性症20例、前頭側頭型認知症44例、アルツハイマー病29例、パーキンソン病10例、レヴィー小体型認知症15例、神経変性疾患のない健常者27例)。各患者には標準的な臨床検査および神経心理学的検査を実施した。CSF中でCSFタウ蛋白の33kDa/55kDa比を評価するための半定量的な免疫沈降法を開発した。MRI評価とVBM解析を実施した。
結果
タウ蛋白形状比は、年齢でマッチさせた対照者(0.989±0.343)および他の神経変性疾患を有する患者(範囲0.899〜1.215)に比べ、PSP患者(0.504±0.284)で有意に低下していた。PSP対他の各サブグループのROC曲線下面積(AUC)は0.863〜0.937の範囲であった(PSP対PSP以外、AUC=0.897、p<0.0001)。VBM解析では、CSFタウ蛋白形状比の低下と脳幹萎縮との有意な相関が示された。
結論
脳幹ニューロンの感受性に選択的に影響を及ぼす短縮型タウ蛋白の産生量は、PSPの特異的で信頼できるマーカーであると考えられる。タウ蛋白形状比は進行性核上性麻痺で最も低く、他の神経変性疾患とは重複していなかった。。
コメント
いわゆるパーキンソニズムを呈する疾患は多数あり、鑑別診断には、経験による技能を要する。中でも、PSPの診断には苦慮することが多いが、予後を考えるうえでも早期診断は重要である。以前より、PSPはグリア細胞内にタウ蛋白が蓄積するタウオパチーの一疾患であり、特にtufted astrocyteは特徴的と考えられてきた。しかし、髄液中の全タウやリン酸化されたタウ量には他疾患との差はないと言われておりバイオマーカーによる診断は困難であった。本論文は、新たに開発した免疫沈降法により髄液中のタウ蛋白の33kDa/55kDa比率を測定し、その比率の低下がPSPに特異的であることを示した。バイオマーカーによる診断の可能性を指摘した報告であり、更に比率の低下と脳幹の萎縮の相関も併せて報告しており、診断および発症機序を考えるうえでも示唆に富む論文である。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed: