デンマークにおけるダウン症評価スクリーニングの導入の効果:地域コホート研究
Impact of a new national screening policy for Down’s syndrome in Denmark: population based cohort study
Ekelund CK, Jørgensen FS, Petersen OB, Sundberg K, Tabor A; Danish Fetal Medicine Research Group.
Department of Fetal Medicine, Rigshospitalet, Copenhagen University Hospital, 2100 Copenhagen, Denmark
BMJ. 2008 Nov 27;337:a2547. doi: 10.1136/bmj.a2547
目的
デンマークにおいて2004〜2006年に妊娠初期3カ月の間にダウン症評価スクリーニングを導入した効果について、ダウン症新生児数と絨毛採取および羊水穿刺の件数の推移、ならびに2005年および2006年の評価スクリーニングによる診断割合および偽陽性率から評価する。
デザイン
デンマークの国内全体をカバーしている地域コホートを用いた研究
調査対象
デンマークの婦人科および産科19施設からの2000〜2007年の細胞遺伝学の中央登録室のデータを用いた。
分析対象
デンマークの年間の妊婦65,000名である
主要評価指標
主要評価指標は、出生前または出生後にダウン症と診断された胎児および新生児数と、絨毛採取および羊水穿刺の実施件数とした。副次的評価指標は、2005年および2006年にスクリーニング検査を受けた女性数、評価スクリーニングでの陽性割合、ならびに2005年および2006年において出生後にダウン症と診断された新生児に関するスクリーニング情報とした。
結果
ダウン症新生児数は、2000〜2004年には年間55〜65例であったが、2005年には31例、2006年には32例に減少した。絨毛採取および羊水穿刺の実施総数も2000年の7,524件から2006年の3,510件まで減少した。スクリーニングによりダウン症と診断された者の割合は2005年には86%(95%信頼区間[CI]79〜92%)、2006年には93%(95%CI 87〜97%)であった。対応する偽陽性率は、3.9%(95%CI 3.7〜4.1%)、3.3%(95%CI 3.1〜3.4%)であった。
結論
デンマークにおいて、全国的に妊娠初期3カ月の間に複合的なリスク評価項目を用いたダウン症のスクリーニングシステムを導入したところ、ダウン症を有する新生児数は半減した。また、絨毛採取および羊水穿刺の検査の実施数も、このスクリーニング方式が完全に実施されていない時期と比べて大幅に減少した。
コメント
デンマークはこぢんまりした国であり、全国の妊産婦や患者、障害者の情報が把握できる仕組みができていることにより可能となった研究と思われる。障害者の出生が少なくなること、また母子にリスクの高い検査の実施件数が少なくなることは望ましいことではある。染色体異常を有する胎児ではないかと疑われ検査を実施されるのは妊娠後半となってしまう。妊娠後期には診断のため侵襲性のある検査が必要となる。また、妊娠後期には診断が確定したとしても中絶できない時期となっている。デンマークでは妊娠初期に侵襲性の少ない評価項目を用いたスクリーニングを行うことにより、ダウン症の出生数と侵襲性のある検査件数の双方を減らす成果をあげることができたとする論文である。出生前診断のあり方については生命倫理の点から難しい問題がある。わが国で政策として実施していくうえではこの点の議論が不可欠になると思われる。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 健康政策学 高鳥毛 敏雄先生
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