Parkin遺伝子変異のキャリアと非キャリアの若年性パーキンソン病患者に関する集学的研究
A multidisciplinary study of patients with early-onset PD with and without parkin mutations
Lohmann E, Thobois S, Lesage S, Broussolle E, du Montcel ST, Ribeiro MJ, Remy P, Pelissolo A, Dubois B, Mallet L, Pollak P, Agid Y, Brice A;
French Parkinson's Disease Genetics Study Group.
Neurology. 2009 Jan 13;72(2):110-6. Epub 2008 Nov 5
目的
若年性パーキンソン病(EOPD)における表現型と遺伝子型の相関を明らかにするため、Parkin遺伝子変異を有する患者と有さない患者を対象として、神経学的、神経心理学的、および精神医学的検査を実施した。
背景
常染色体劣性パーキンソニズムの主な原因は、Parkin遺伝子(PARK2)の変異である。通常、臨床経過が緩徐である、低用量のレボドパに良好に反応する、治療誘発性ジスキネジアの頻度が高い、認知症が認められないなどの典型的なPDとしての臨床像がみられ、発症が若年であることを特徴とする。
方法
EOPD患者44例(Parkin遺伝子変異あり21例、なし23例)と、Parkin遺伝子の単一のヘテロ接合体変異を有する健常者9名を対象として、臨床的、神経心理学的、および精神医学的にわたる広範な検査を実施した。
結果
神経学的、神経心理学的、および精神医学的特徴は全患者で同等であった。例外として、Parkin遺伝子変異キャリアでは、非キャリアに比べてドーパミン作動薬の1日量が有意に低く、レボドパの血中濃度に関連する症状の変動の発現時期が遅かった(p<0.05)。全般的な認知機能には、両群間で大きな差は認められなかった。精神医学的症状(うつ病)は、Parkin遺伝子の単一のヘテロ接合体変異を有する健常者よりも患者で多くみられたが、患者の両群間で差は認められなかった。
結論
各基準において、Parkin遺伝子変異キャリアは、他の若年性パーキンソン病(PD)患者と臨床的に識別不能であった。Parkin遺伝子変異を有する患者では、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの全体的な重度の脱落と関連して、低用量のレボドパその他ドーパミン作動薬に対する反応が良好であり、症状の変動の発現が遅い。しかし、認知障害や特有の行動および精神症状は、他の若年性PD患者に比べて重度ではなかった。
コメント
若年性パーキンソン病の遺伝型と表現型の関連について、日本人患者で最初に報告されたParkin遺伝子の変異で出現するParkin型若年性パーキンソン病の患者で多角的に検討した論文である。遺伝子変異で出現する疾患の場合、遺伝型と表現型に相違があることが多い。しかし、パーキン型若年性パーキンソン病の場合は相違が少なく、遺伝子型と、精神行動学的異常を呈することを特徴とする表現型の一致が特徴であり、一疾患単位をなすとされていた。本論文はそれに反論するものであり、著者の指摘するとおり、症例数が少なく、経過追跡の年数も少ないが、遺伝病の遺伝型と表現型を考察するうえでも、一読する価値のある論文である。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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