発症前神経変性の自動検出:発症前ハンチントン病
Automatic detection of preclinical neurodegeneration: presymptomatic Huntington disease
Klöppel S, Chu C, Tan GC, Draganski B, Johnson H, Paulsen JS, Kienzle W, Tabrizi SJ, Ashburner J, Frackowiak RS; PREDICT-HD Investigators of the Huntington Study Group.
Department of Psychiatry and Psychotherapy, Freiburg Brain Imaging, University Clinic Freiburg, Germany
Neurology. 2009 Feb 3;72(5):426-31
背景
神経変性疾患の治療が最も有益となる可能性が高いのは、ごく早期、おそらく発症前の変性段階である。われわれは、わずかな変性変化を検出するための全自動構造MRI分類法(fully automatic structural MRI classification methods)の有用性を検討した。ハンチントン病(HD)には確実な遺伝子検査が存在するため、症状がない遺伝子変異キャリアにおける分類法の精度を判定する優れた基準となる。
方法
本研究では、MRI上の灰白質領域から、事前情報がない状態で発症前のHD遺伝子変異キャリア(PSC)を自動的に同定するための多変量サポートベクターマシーンの有用性を検討した。PSC 96例と年齢および性別をマッチさせた対照95例の多施設データセットを調査対象とした。予測された発症までの期間に基づいて、PSC群を3群のサブグループに分類した。発症の推定時期はDNA変異の程度と年齢の相関より算出した。
結果
5年以内にHDの明確な症状を発症する可能性が33%以上とされた被験者のうち、PSC群に正確に割り付けられたのは69%であった。解析において疾患の影響が及ぶ領域を事前に選択した場合、分類精度は83%まで向上した。5年以内に症状を発症する可能性が10%未満の場合には、精度はチャンスレベルであった。
結論
HD症状発症が近いと推定される発症前のハンチントン病遺伝子変異キャリアは、補足的な事前情報なしで、1回の構造MRIに基づいて対照群と区別された。変性変化がわずかな場合や不定な場合の識別には、事前情報が必要である。
コメント
本論文は脳MRIの灰白質から得られた情報を、サポートベクターマシーンという特殊な判別分析を用いることにより、ハンチントン病の発症前診断が可能であるという報告である。ハンチントン病は常染色体優性遺伝で、ハンチンチン遺伝子の異常すなわちCAGリピートの増大による疾患であり、浸透率がほぼ100%と高いこと、リピートの長さが発症時期に影響することなどを解析に利用している。早期診断の有益性は甚大なものがあるが、本疾患は認知症や精神症状を将来呈することが多く、発症前診断には医療倫理、神経倫理上注意すべきことが多く、遺伝カウンセリングを含め医療・福祉・保健の総合的支援が必要性であることを付け加えたい。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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