虫垂炎または腸間膜リンパ節炎の罹患とその後の潰瘍性大腸炎罹患リスクとの関連:スウェーデンおよびデンマークにおけるコホート研究から
Appendicitis, mesenteric lymphadenitis, and subsequent risk of ulcerative colitis: cohort studies in Sweden and Denmark
Frisch M, Pedersen BV, Andersson RE.
Department of Epidemiology Research, Division of Epidemiology, Statens Serum Institut, DK-2300 Copenhagen S, Denmark
BMJ. 2009 Mar 9;338:b716. doi: 10.1136/bmj.b716.
目的
虫垂切除術を受けた者では潰瘍性大腸炎のリスクが低下することについては多くの報告がある。しかし、虫垂切除術そのものが関連しているのか、または虫垂炎または腸間膜リンパ節炎があることが関連しているかはわかっていない。この点を明らかにすることを目的に検討を行う。
試験デザイン
全国規模のコホート研究。
調査を行った地域
スウェーデンおよびデンマーク。
調査対象者
虫垂切除術を受けたスウェーデンの患者(1964〜2004年)およびデンマークの患者(1977〜2004年)の合わせて709,353人を調査対象とし、その後の潰瘍性大腸炎罹患状況を追跡調査した。また、両親または兄弟に炎症性腸疾患の家族歴を有する224,483人について、虫垂切除術後の潰瘍性大腸炎リスクを検討した。
主要評価指標
相対リスクの評価指標として、標準化罹患比および罹患率の比を用いた。
結果
虫垂切除術歴を有するコホートを1110万人・年にわたって追跡調査した。1,192人が潰瘍性大腸炎を発症した(100,000人・年あたり10.8人)。虫垂炎および腸間膜リンパ節炎がなかった虫垂切除術を受けた者では、切除後の罹患リスクの低下はみられなかった(標準化罹患比1.04、95%信頼区間0.95〜1.15)。しかし、20歳未満の者で、虫垂炎(0.45、0.39〜0.53)または腸間膜リンパ節炎(0.65、0.46〜0.90)を有した虫垂切除術を受けた者では有意に罹患リスクが低下していた。炎症性腸炎疾患の家族歴を有する者では、潰瘍性大腸炎リスクは、家族歴のない者と比べて、罹患リスクは明らかに高くなっていた(観察値1,404例 対 期待値446例、標準化罹患比3.15、2.99〜3.32)。虫垂炎がなかった虫垂切除術を受けた者では罹患リスクは低下していなかった(虫垂切除術を受けていない者に対する罹患率の比1.04、0.66〜1.55)、虫垂炎があった虫垂切除術を受けた者では罹患リスクは半減していた(0.49、0.31〜0.74)。
結論
炎症性腸疾患の家族性素因の有無にかかわらず、小児期および青年期において虫垂炎または腸間膜リンパ節炎のあった者では、成人期における潰瘍性大腸炎の罹患リスクは有意に低かった。虫垂切除術を受けたこと自体だけでは潰瘍性大腸炎の罹患リスクは下がっていなかった。
コメント
潰瘍性大腸炎の原因はわかっていないが、自己免疫疾患であると考えられている。腸管には微生物も多く存在し、腸管は様々な異物にも接する臓器である。そのため免疫防御の仕組みは複雑である。これまで虫垂切除でリスクが下がるとの報告がなされているが、本論文では単に虫垂を切除するだけではリスクが下がらないことを示唆している。切除すべき理由もなく、潰瘍性大腸炎発症予防のために虫垂を切除することは意味がないことを示唆するものである。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 健康政策学 高鳥毛 敏雄先生
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