γセクレターゼ阻害薬は中枢神経系におけるアミロイドβ産生を抑制する
A γ-secretase inhibitor decreases amyloid-β production in the central nervous system
Bateman RJ, Siemers ER, Mawuenyega KG, Wen G, Browning KR, Sigurdson WC, Yarasheski KE, Friedrich SW, Demattos RB, May PC, Paul SM, Holtzman DM
Department of Neurology, Washington University School of Medicine, St. Louis, MO
Annales of Neurology. 2009 Mar 18.
目的
中枢神経系(CNS)におけるアミロイドβ(Aβ)の過剰産生またはクリアランス低下による蓄積は、アルツハイマー病の発症に不可欠な事象であると仮定されている。しかし現在のところ、ヒトCNSにおけるAβ産生またはクリアランスに対する薬効の評価方法は存在しない。本研究の目的は、ヒトCNSにおけるAβ産生に対するγセクレターゼ阻害薬の影響を評価することであった。
方法
われわれが最近開発した安定同位体標識法を脳脊髄液採取と組み合わせた手法により、γセクレターゼ阻害薬(LY450139)投与時のAβ産生を直接測定した。健康な男性(21〜50歳)に、本剤100mg、140mg、280mg(1群あたり5例)を経口で単回投与し、CNS中のAβ産生が抑制されるかを評価した。
結果
LY450139により、CNS中のAβ産生は用量依存的に有意に減少し、12時間のAβ産生は投与量100mg、140mg、280mg群でそれぞれ47%、52%、84%減少した。Aβクリアランスに差は認められなかった。
結論
CNS中の蛋白質の安定同位体標識法は、アルツハイマー病や他のCNS障害の疾患原因とより潜在的に関連すると考えられる治療薬が標的とする蛋白質について、その産生およびクリアランス率に対する薬剤の影響を評価するために利用できる可能性がある。今回の手法の結果は、アルツハイマー病のような疾患に関するより大規模かつ長期的な臨床試験をデザインする際に、薬剤の投与法や頻度の決定に役立ち、薬剤の効果的な検証を促進すると考えられる。
コメント
本論文はアルツハイマー病において異常蓄積するといわれているアミロイドβ蛋白の中枢神経内における産生量、クリアランス量の測定法を開発し、それを用いてγセクレターゼ阻害薬服用によりアミロイドβ蛋白産生が抑制されることを見出したものである。γセクレターゼ阻害薬は、世界的には既に臨床試験が開始されているようで、治療薬としての登場が待たれる。また、本論文の脊髄液採取と組み合わせた安定同位体標識法は、神経細胞内の蛋白質制御機構の障害により異常蛋白質が蓄積することが原因といわれている、他の神経変性疾患であるパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの治療法開発時の効果判定にも応用可能と考えられ興味深い。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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