memantineはMS患者の可逆的な神経学的障害を誘発する
Memantine induces reversible neurologic impairment in patients with MS
Villoslada P, Arrondo G, Sepulcre J, Alegre M, Artieda J
Department of Neurology, Hospital Clinic, Villarroel 170, 08036 Barcelona, Spain
Neurology. 2009 May 12;72(19):1630-3. Epub 2008 Dec 17
背景
多発性硬化症(MS)では認知機能障害が非常に多くみられ、患者の生活の質(QOL)を大きく損なう。そこで、MS患者の認知機能がmemantineにより改善するかを検討した。
方法
認知機能障害のあるMS患者を対象として、memantine(30 mg/日)のパイロット試験を実施した。本試験は、1年間の無作為化二重盲検クロスオーバー試験として計画し、認知機能障害のあるMS患者60例でmemantineとプラセボを比較した。認知機能障害は、Brief Repeatable Battery–Neuropsychology(BRB-N)の2つの認知機能領域の検査のうち、2種類以上が基準データから標準偏差の1.5倍以上下回る場合と定義した。主要評価項目は言語記憶の改善とし、副次的評価項目は安全性、他の認知機能領域における改善、障害、QOLとした。本試験はwww.clinicaltrials.orgに登録された(NCT00638833)。
結果
19例の患者を登録したが、9例がQOLの低下をきたす神経学的症状の悪化を報告し、本試験は中止された。この9例のうちmemantine群の7例では、霧視、疲労、重度の頭痛、筋力低下の増悪、歩行困難、または不安定歩行がみられた。プラセボ群で神経学的症状を報告した患者は2例のみであり、症状は両者とも、疾患修飾薬の変更に関連していた。有害事象は、最大用量(30mg/日)に達した場合にのみ生じた。投薬を中止すると、患者の障害は数日以内にベースラインの状態まで回復した。
結論
memantine30mg/日の投与により、多発性硬化症の神経学的症状は一時的に悪化する可能性がある。
コメント
塩酸メマンチンは、記憶や学習に関与する神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体の一つ、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体に対する拮抗薬であり、米国食品医薬品局(FDA)では重度アルツハイマー病治療薬として承認されている(日本では臨床試験は終了したが、まだ承認はされていない)。一方MSでは、中でも二次性進行型では、認知機能障害が問題となることが多い。今回はメマンチンのMSの認知機能障害に対する効果を検討したものであるが、MSの神経症状にもグルタミン酸が関与している可能性もあり興味のある検討である。結果はnegative dataであるが、使用量の増加により、MSの以前あった神経症状の増悪を引き起こし、それは可逆的なものであることが判明した。今回の検討での神経症状の増悪は仮性再燃と考えられるが、MSの病態、神経症状の再燃の機序に関して示唆に富む論文である。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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