ハンチントン病リスクを有する人々にみられる遺伝子差別の認識
Perceptions of genetic discrimination among people at risk for Huntington’s disease: a cross sectional survey
Bombard Y, Veenstra G, Friedman JM, Creighton S, Currie L, Paulsen JS, Bottorff JL, Hayden MR;
Canadian Respond-HD Collaborative Research Group
BMJ 2009 Jun 9 ;338:b2175 doi:10.1136/bmj.b2175
目的
ハンチントン病リスクを有する人々について、遺伝子検査の受検者または未受検者で遺伝子差別(genetic discrimination)の認識の内容とその認識率が関係しているのかを評価すること。
デザイン
自己報告による横断的調査。
調査対象
カナダの農村部および都市部にある遺伝子クリニックおよび運動障害クリニック7施設。
分析対象
分析対象者はハンチントン病リスクを有している者について、遺伝子検査を受検または未受検の症状のない233例(回答率80%)である。167例が検査を受けた。ハンチントン病遺伝子の変異ありが83例、変異なしが84例であった。66例は検査を受けていなかった。
主要評価指標
家族歴または遺伝子検査の結果によって、遺伝子差別の認識およびそれに関連する心理的苦痛の認識について、自己報告により評価した。
結果
遺伝子差別の認識があったと報告した者が93例であった(39.9%)。報告された差別の内容は、保険(29.2%)、家族(15.5%)、社会(12.4%)に関する場面でのものが多くみられた。雇用(6.9%)、医療(8.6%)、または公的部門(3.9%)に関する場面における差別の認識の報告例は少なかった。ハンチントン病遺伝子変異キャリアであることを認識している回答者では差別の認識の報告が最も多かったが、遺伝子検査を受けたことと遺伝子差別の認識の報告との間には関連が認められなかった。遺伝子差別を受けた主な理由は、遺伝子検査の結果によるよりもハンチントン病の家族歴があることにあった。心理的苦痛の認識の報告と遺伝子差別の認識の報告との間にも関連が認められた(P<0.001)。
結論
遺伝子差別の認識はハンチントン病リスクを有する人々の多くが感じていることであり、彼らの心理的苦痛の原因となっていた。遺伝子差別の主な理由は、遺伝子検査の受検結果によるものだけではなく、家族歴を有していることから生じていた。
コメント
医学の進歩により、病気の原因が遺伝子レベルで解明され、発症する前に遺伝子検査で診断することも可能となってきている。ハンチントン病もそうした病気の1つである。家族は自分もキャリアかどうかが心配であるが、キャリアでなくとも遺伝病の者が家族にいるだけで、様々な差別感を認識しているということを示した論文であった。遺伝子レベルで病因が明らかになることにより、人々に対して生じてくる社会的な差別に対する影響にどのように対応していくか、難しい課題を提示している。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 健康政策学 高鳥毛 敏雄先生
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