炎症性関節炎では滑液は自己抗原のシトルリン化が起こる部位である
Synovial fluid is a site of citrullination of autoantigens in inflammatory arthritis
Kinloch A, Lundberg K, Wait R, Wegner N, Lim NH, Zendman AJ, Saxne T, Malmström V, Venables PJ.
Imperial College London, London, UK.
Arthritis Rheum. 2008 Aug;58(8):2287-95.
目的
関節リウマチ(RA)において、滑液が自己抗原候補であるシトルリン化抗原(α-エノラーゼ等のシトルリン化抗原)の産生部位となっているかどうかを検討する。
方法
RA患者20例、脊椎関節炎(SpA)患者20例、および変形性関節炎(OA)患者20例から滑液を採取した。ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動により検体を分離した後に、クマシーブルー染色、ならびにシトルリン化蛋白、α-エノラーゼおよび脱イミノ化酵素であるペプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ2(PAD-2)およびPAD-4に対する免疫ブロットを行った。二次元電気泳動を用いてRA患者の滑液検体由来の蛋白を分離し、免疫ブロット法および質量分析法により各蛋白の同定を行った。また、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて、抗citrullinated alpha-enolase peptide 1(CEP-1)抗体および抗環状シトルリン化ペプチド2抗体の測定を行った。
結果
RA患者とSpA患者の滑液ではシトルリン化ポリペプチドが検出されたが、OA患者の検体では検出されなかった。α-エノラーゼはすべての検体で検出され、その平均濃度はRA患者の検体では6.4 ng/μL、SpA患者の検体では4.3 ng/μL、OA患者の検体では<0.9 ng/μLであった。二次元電気泳動から、RA患者の滑液ではα-エノラーゼがシトルリン化されているという所見が得られた。シトルリン化酵素PAD-4は、3つの疾患群すべての検体で検出された。PAD-2はRA患者の18検体、SpA患者の16検体で検出されたが、OA患者の検体では検出されなかった。抗CEP-1抗体はRA患者の12検体(60%)で検出されたが、SpA患者の検体では検出されず、シトルリン化α-エノラーゼペプチドに対するOA患者では1検体で認められた。
結論
これらの結果から、炎症性関節炎でみられるシトルリン化自己抗原の発現における滑液の重要性が示されている。シトルリン化蛋白の発現は炎症によるものであるにもかかわらず、抗体反応はRAに特異的である。
コメント
関節リウマチ(RA)においては従来、自己抗体である免疫グロブリンIgGのFcに対する抗体、すなわちリウマチ因子(RF)が診断に重要な役割を担っていたが、早期かつRAと診断するには陰性である場合が認められ、診断意義は低かった。しかし最近、環状シトルリン化ペプチド(CCP)と共にアルギニン残基のシトルリン化蛋白はPADによりアルギニンがデイミネートされることにより形成され(CEP-1)、これらがRAに見出されることが示され、RAとしての診断的意義が高まった。 CEP-1の産生場所は不明であったが、このたび滑膜で産生されることが示され、血中に流出し診断検査として有用されるようになった。抗CCP抗体と共に抗CEP-1抗体(抗シトルリン化α-エノラーゼペプチド1抗体)もRAに特異的で、診断率が高まった。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
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