パーキンソン病に対する被殻AADC遺伝子治療の安全性および忍容性
Safety and tolerability of putaminal AADC gene therapy for Parkinson disease
Christine CW, Starr PA, Larson PS, Eberling JL, Jagust WJ, Hawkins RA, Vanbrocklin HF, Wright JF, Bankiewicz KS, Aminoff MJ.
Departments of Neurology (C.W.C., K.S.B., M.J.A.), Neurological Surgery (P.A.S., P.S.L., K.S.B.), and Radiology and Biomedical Imaging (R.A.H., H.F.V.), University of California, San Francisco, CA; The Michael J. Fox Foundation for Parkinson's Research (J.L.E.), New York, NY; Department of Molecular Imaging and Neuroscience, Lawrence Berkeley National Laboratory, and Helen Wills Neuroscience Institute (W.J.J.), University of California, Berkeley, CA; University of Pennsylvania School of Medicine (J.F.W.), Philadelphia, PA.
Neurology. 2009 Oct 21. [Epub ahead of print]
背景
パーキンソン病(PD)では、レボドパ治療の有効性は経時的に低下する。これはおそらく、黒質線条体ニューロンの変性により、レボドパをドパミンに変換する芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)が進行性に減少するためである。PDの霊長類モデルでは、ヒトAADC遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルス2型ベクター(AAV-hAADC)を線条体に注入すると、低用量のレボドパに強い反応を示し、高用量でみられる副作用もない。これらのデータを受けて臨床試験を実施した。
方法
中等度に進行したPD患者を対象として、AAV-hAADCを両側の被殻に注入した。ベースラインおよび6カ月後に、低用量群と高用量群(各群5例)を標準的な臨床評価尺度により評価した。遺伝子発現の指標として、AADCトレーサーである[18F]fluoro-L-m-tyrosine(FMT)を用いたPETスキャンを実施した。
結果
遺伝子治療の忍容性は良好であったが、手術後に1例で症候性、2例で無症候性の頭蓋内出血が生じた。総合評価尺度および運動評価尺度は両群で改善された。運動日誌からも、「オン」時間の増加と「オフ」時間の短縮が示されたが、「オン」時間時のジスキネジア増加は認められなかった。6カ月後のFMT PETでは、被殻における取り込み率が低用量群では30%増加し、高用量群では75%増加していた。
結論
今回の試験から、AAV-hAADCを両側の線条体に注入すると、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)の平均スコアが「オン」および「オフ」状態の両者で約30%改善されるというクラスIVのエビデンスが得られた。ただし、手術により頭蓋内出血および自己限定性の頭痛(頭痛の経過が患者に限って一定しており、ある期間で自然に改善する)のリスクが増加する可能性がある。
コメント
パーキンソン病の遺伝子治療の論文である。パーキンソン病は線条体のドパミンが減少して症状が出現し、病初期にはレボドパが有効であるが、次第に効果が減弱する。進行したパーキンソン病では、服用したレボドパをドパミンに変換して効果を発揮させるAADC が欠乏しているためと考えられている。本報告は、欠乏したAADCの遺伝子を線条体に導入し奏効したというものであるが、本邦では自治医科大学で2007年に実施され、有効性が報告されている。副作用はないようであるが、本論文で指摘された頭痛や、頭蓋内出血もあり、今後は安全性の確立が待たれる。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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