1989〜2008年のイングランドおよびウェールズにおけるダウン症児の出生数および出生前診断数の推移:国立ダウン症細胞遺伝登録データーベースのデータ解析
Trends in Down’s syndrome live births and antenatal diagnoses in England and Wales from 1989 to 2008: analysis of data from the National Down Syndrome Cytogenetic Register
Morris JK, Alberman E.
Wolfson Institute of Preventive Medicine, Barts and the London School of Medicine and Dentistry, Queen Mary University of London, London
BMJ 2009 Oct 26;339:b3794. doi: 10.1136/bmj.b3794.
目的
1989〜2008年の間にイングランドおよびウェールズでみられたダウン症児の出生数および出生前診断数の推移についてみること。
デザインおよび設定
国立ダウン症細胞遺伝登録データーベースに登録された、1989年以降、イングランドおよびウェールズのすべてのダウン症の出生前および出生後診断された26,488例である。
介入内容
ダウン症に関する出生前検査および診断の実施、ならびに診断後のダウン症児の中絶。
主要評価項目
ダウン症児の出生数とした。
結果
1989/90年の出生数は2007/8年と同等であるにもかかわらず、出生前および出生後のダウン症の診断数は2007/8年で71%増加していた(1989/90年の1,075例に対し2007/8年は1,843例)。しかし、出生前診断後の中絶により、ダウン症児の出生数は1%減少していた(752例から743例、出生数1,000例あたり1.10から1.08に減少)。カップルの第1子出生時期が高齢化しているため、出生前診断がなければ、ダウン症児の出生数は48%増加していたと推定されている(959例から1,422例)。37歳以上の母親の出生前診断の受診率は70%で変化はなかった。37歳未満の母親では、検査の簡便性および感度の向上により、出生前診断の受診率が3%から43%に上昇していた。
結論
1989年以降、出生前診断の普及および改善により、出産年齢上昇によるダウン症児の増加は抑えられていた。出生前診断の受診率は、若齢妊婦では顕著に増えてきていたが、高齢妊婦では比較的一定にとどまっていた。このため今後検査が改善しても依然として多数のダウン症児が出生する可能性があり、患児に必要で適切な対策を保証するためにダウン症児の出生数調査が必須であることが示唆された。
コメント
自然界の中で誕生するすべての生命は貴重な存在である。医科学の進歩により胎児診断が可能になると、その診断検査により出生後、難病や障害を有するとわかっている人を判断できるようになる。この論文は、古くから知られている染色体異常のダウン症に関するイギリスの実態について報告したものである。自然増加するダウン症児の出生数は抑制されているとの報告をどう受けとめるかは、生命倫理上の観点からは難しい問題である。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 健康政策学 高鳥毛 敏雄先生
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