ハンチントン病の臨床的重症度および進行に正常HTTと変異HTTの相互作用が影響
Normal and mutant HTT interact to affect clinical severity and progression in Huntington disease
N.A. Aziz, MSc C.K. Jurgens, MSc G.B. Landwehrmeyer, MD, on behalf of the EHDN Registry Study Group* W.M.C. van Roon-Mom, PhD G.J.B. van Ommen, PhD T. Stijnen, PhD R.A.C. Roos, MD
Leiden University Medical Center, Department of Neurology, Leiden, The Netherlands
Neurology® 2009 Oct 20;73(16):1280-5. Epub 2009 Sep 23.
背景
ハンチントン病(HD)は、HD遺伝子(HTT)のCAGリピート伸長を原因とする常染色体優性の神経変性疾患である。本研究の目的は、変異対立遺伝子と正常対立遺伝子のCAGリピート数による相互作用が、疾患の重症度および進行に影響するかどうかを評価することであった。
方法
線形回帰と混合効果モデルを用いて、変異HTTと正常HTTのCAGリピート数による相互作用の影響を、1)HD患者921例の発症年齢、2)追跡調査データが得られた患者512例における臨床的重症度および進行、3)未発症のHD変異キャリア16例の磁気共鳴画像による大脳基底核容積について評価した。
結果
正常HTTと変異HTTのCAGリピート数による相互作用は、1)発症年齢(P=0.001)、2)HD患者における運動、認知、機能症状の重症度および進行(行動症状には影響せず)(すべてP<0.05)、3)未発症被験者の大脳基底核容積(P<0.05)に影響していた。変異HTTのCAGリピート数が少ない被験者では、正常HTTのリピート数増加が症状および病理の重症度と相関していたが、変異HTTのCAGリピート数が多い被験者では、正常HTTのリピート数増加が症状および病理の重症度と逆相関していた。
結論
正常HTTのCAGリピート数が増加すると、変異HTTのCAGリピート数とハンチントン病の重症度および進行との関連は弱まる。この根底にある機序が、正常および変異ハンチンチン(断片)のポリグルタミン領域による相互作用に関与していると考えられ、さらなる解明が必要である。これらの所見には予測能があると考えられ、今後の治療試験のデザインと解釈にとって極めて重要である。
コメント
オランダのハンチントン病医療の中心地ライデンからの大規模コホート研究の報告で、変異HTT遺伝子と正常HTT遺伝子の相互作用がハンチントン病の症状や経過に与える影響をみた論文である。変異HTT遺伝子の病的CAGリピート数の延長が40程度と比較的少ない場合は正常HTT遺伝子のリピート数が多いと症状が強くなり、変異HTT遺伝子の病的CAGリピート数の延長が50程度と多い場合は正常HTT遺伝子の正常リピート数が多いと症状は軽くなるとの結果である。細胞障害はgain of functionによると考えられてきたが、相互作用によるloss of functionへの関与も示唆される。病因や薬剤の治療効果判定においても注目すべき指標と考えられ、今後の研究の発展が期待される。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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