膜型タイプ1マトリックスメタロプロテアーゼはヒト関節リウマチにおける滑膜の軟骨への浸潤の重要な促進因子である
Membrane type 1 matrix metalloproteinase is a crucial promoter of synovial invasion in human rheumatoid arthritis
Miller MC, Manning HB, Jain A, Troeberg L, Dudhia J, Essex D, Sandison A, Seiki M, Nanchahal J, Nagase H, Itoh Y.
Imperial College London, London, UK.
Arthritis Rheumatism 2009 Mar;60(3):686-97
目的
軟骨への滑膜パンヌスの浸潤は関節リウマチ(RA)の特徴であるが、この過程にはコラーゲンマトリックスの分解が必要である。本研究の目的は、コラーゲン分解性のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の1つである膜型タイプ1 MMP(MT1-MMP)が、滑膜パンヌスの浸潤性に対して果たす役割について検討することであった。
方法
初代培養滑膜細胞のウエスタンブロット解析およびRA関節標本の免疫組織化学分析により、ヒトのRAパンヌスにおけるMT1-MMPの発現と局在を調べた。組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(TIMP-1)、TIMP-2またはGM6001の存在下および非存在下で三次元コラーゲン浸潤アッセイおよび軟骨浸潤アッセイを行うことにより、MT1-MMPの機能的役割について解析した。また、触媒ドメインを欠失させたドミナントネガティブ型のMT1-MMPコンストラクトをアデノウイルスで発現させた際の影響についての検討も行った。
結果
MT1-MMPはRA関節のパンヌス-軟骨接合部において高発現していた。分離した新鮮な関節リウマチ滑膜組織および分離したRA滑膜線維芽細胞は、MT1-MMP依存性に三次元コラーゲンマトリックスに浸潤した。TIMP-2とGM6001は浸潤を阻害したが、TIMP-1は阻害しなかった。細胞表面のMT1-MMPによるコラーゲン分解活性とproMMP-2活性化を阻害するドミナントネガティブ型MT1-MMPの過剰発現によっても、浸潤は阻害された。滑膜線維芽細胞は軟骨にもMT1-MMP依存性に浸潤した。この過程は、軟骨マトリックスからアグリカンを除去するとさらに増強された。
結論
MT1-MMPは、ヒトRAにおけるパンヌス浸潤の際に重要なコラーゲン分解性プロテアーゼとして機能する。MT1-MMP依存性の浸潤の特異的阻害は、RAに対する新たな治療戦略となる可能性がある。
コメント
原因はいまだ不明であるが、種々のサイトカイン、ケモカイン、接着因子の発現増強により滑膜細胞の増殖が生じ、加えて滑膜の軟骨への浸潤が生じることによって、関節軟骨の減少そして関節腔の狭小が関節リウマチにおける関節破壊につながる。 本研究は、軟骨基質破壊に関与するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の1種であるMT1-MMPが、滑膜細胞の軟骨への浸潤に重要なコラーゲン分解性プロテアーゼとして作用することを示した画期的な情報を提供した。パンヌスの軟骨への浸潤阻害による治療の開発も期待できる。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
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