特発性レム睡眠行動障害におけるレム睡眠時の筋弛緩不全の重症度はパーキンソン病の予測因子である
Severity of REM atonia loss in idiopathic REM sleep behavior disorder predicts Parkinson disease
Postuma RB, Gagnon JF, Rompré S, Montplaisir JY
Department of Neurology, McGill University, Montreal General Hospital, Montreal, Canada
Neurology. 2010 Jan 19;74(3):239-44.
背景
特発性レム睡眠行動障害(RBD)患者の50%以上は、パーキンソン病(PD)または認知症を発症する。現時点では、発症する患者を予測する方法は存在しない。特発性RBD患者の診断時には、終夜睡眠ポリグラフ検査が全員に実施されるため、ベースラインの睡眠変数により、最終的な神経変性疾患を予測できるかどうかを分析する機会がある。
方法
経時的に調査した特発性RBD患者のコホートにおいて、神経変性疾患を発症した患者を同定した。これらの患者と、年齢、性別、追跡調査期間でマッチさせた発症していないRBD患者および対照群を対象とした。ベースライン(神経変性疾患発症前)の睡眠ポリグラフ検査結果を両群間で比較した。
結果
神経変性疾患を発症した患者26例を対象とした(PD12例、多系統萎縮症1例、認知症13例)。睡眠ポリグラフ検査から疾患発症までの間隔は6.7年間、平均年齢は69.5歳、81%が男性であった。両群間で睡眠潜時、睡眠時間、段階2〜4の睡眠の割合、レム睡眠の割合、および睡眠効率に差はなかった。しかし、神経変性疾患を発症した特発性RBD患者では、発症しなかった患者に比べて、ベースラインにおけるレム睡眠時のtonic期のオトガイ筋の筋活動が増加していた(62.7±6.0% 対 41.0±6.0%、P=0.020)。この影響は、PD発症患者でのみ認められ(72.9±6.0% 対 41.0±6.0%、P=0.002)、認知症発症患者では認められなかった(54.3±10.3、P=0.28)。レム睡眠時のphasic期のオトガイ下の筋活動には、両群間で差はなかった。
結論
神経変性疾患を早期に発症していないレム睡眠行動障害患者では、ベースラインの睡眠ポリグラフ検査におけるレム睡眠時の筋弛緩不全の重症度が、パーキンソン病発症の予測因子となる。
コメント
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠期は脳の活動が覚醒期に近く、夢を見ていることが多く、しかし、全身の筋活動は弛緩していると言われている。もし、弛緩していなければ、夢を見ながら行動してしまい大変な事態を引き起こすこともあり得る。レム睡眠行動異常症は、実際に筋肉の弛緩が起こらず、行動してしまう病気である。特発性すなわち原因が不明のことが多いが、パーキンソン病の非運動徴候の一つとしても注目されている。本論文によれば、レム睡眠のtonic期における筋弛緩不全がパーキンソン病などの神経変性疾患の早期診断につながるということであるが、運動徴候出現を神経保護作用等で防ぐことが可能になれば大変有用なことだと考えられる。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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