早期関節リウマチに対するTNF阻害薬を用いた順次切り替え治療の治療に要する費用対症状改善効果
Cost-effectiveness of sequential therapy with tumor necrosis factor antagonists in early rheumatoid arthritis
Davies A, Cifaldi MA, Segurado OG, Weisman MH
United BioSource Corporation, London, UK.
The Journal of Rheumatology. 2009 Jan;36(1):16-26.
目的
早期関節リウマチ(RA)患者に対して、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬を初回治療に用い、その後逐次投薬種類を変更して治療を行った場合の生涯にわたる治療に要する費用対症状改善効果を推定し比較すること。
方法
RA患者では疾患経過を通じて治療レジメンの切り替えが何度も行われる。そこで、有効な最後の薬剤が無効となるまで、または死亡するまで継続される順次切り替え逐次療法をモデル化した。モデルでは、短期の無作為化比較試験による臨床転帰の公表結果を用いた。5種類の逐次療法のそれぞれについて、治療の直接コストと就労困難なための生産性損失のコストを考慮してモデル化した。治療に要する増分費用対症状改善効果比は、質的生活存続年(QALY)の向上として表した。
結果
TNF阻害薬を用いた逐次療法では、通常の疾患修飾性抗リウマチ薬を用いたレジメン単独の場合に比べてQALYが向上した。アダリムマブ+メトトレキサート(MTX)併用を一次治療とした逐次療法の費用対効果は、インフリキシマブ+MTX併用を一次治療とした逐次療法、およびエタネルセプトを用いた逐次療法のどちらよりも大幅に優れていた。アダリムマブ+MTX併用のQALYあたりのコストは、生産性損失を考慮しない場合には47,157米ドル、考慮した場合には19,663米ドルとなった。アダリムマブ+MTX併用による一次治療に続いて別のTNF阻害薬による二次治療を行う逐次療法を追加としてモデル化したところ、この逐次療法はさらなるQALYの向上をもたらし、1種類のTNF阻害薬を用いたすべての治療戦略に比べ大幅に優れていた。
結論
1種類のTNF阻害薬を用いた3種類の逐次療法のうち、アダリムマブ+MTX併用を一次治療とした逐次療法はQALYが最も向上するという点で費用対効果が高かった。今回の解析で追加としてモデル化を行った逐次療法のような、複数のTNF阻害薬を用いた治療戦略は、さらなるQALYの向上をもたらすという点で費用対効果が高い可能性がある。
コメント
関節の痛みや変形によってQOLが著しく低下する関節リウマチは生涯治療を要するため、高額費用は生活を圧迫し、患者にとって問題である。生物製剤は高額であるが、一方症状の改善は著しくQOLを高める。しかもそのため、費用がかかったとしても、就労可能となり収入を得ることも可能となる。この研究ではTNF-α阻害薬の切り替え治療について費用算定を行い、治療法ごとのコストパフォーマンスを質的な生活存続年(QALY)で表し、その程度の比較をした。その結果、アダリムマブ+MTX治療によりQALYが最も向上することが示された。今後様々な生物製剤が開発されてくるので、患者の生活において重要なデータになると思われる。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
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