高齢患者におけるdisplaced型大腿骨頸部内側骨折に対する初回人工股関節全置換術と人工骨頭置換術の比較:系統的レビュー
Primary total hip arthroplasty versus hemiarthroplasty for displaced intracapsular hip fractures in older patients: systematic review
Hopley C, Stengel D, Ekkernkamp A, Wich M.
DePuy International, Leeds LS11 8DT
BMJ. 2010 Jun 11;340:c2332. doi: 10.1136/bmj.c2332.
目的
高齢患者でのdisplaced型大腿骨頸部骨折において、人工股関節全置換術が人工骨頭置換術に比べて再手術、死亡、合併症の発生率を低下させ、関節機能と生活の質を向上させるかどうかを明らかにすること。
デザイン
ランダム化試験、準ランダム化試験、およびコホート研究の系統的レビューとメタ解析。
データソース
Medline、Embase、Cochraneの対照研究登録データベース、出版社のデータベース、および検索された論文に引用されている文献の調査。
研究の選択
60歳を超える患者でのdisplaced型大腿骨頸部骨折治療において、人工股関節全置換術と人工骨頭置換術を比較しているランダム化対照研究、準ランダム化研究、およびコホート研究(後ろ向きおよび前向き)を対象とした。
データの抽出
ランダム効果モデルで論文を統合したデータから相対リスク、リスク差、および平均差を計算した。解析は実験的デザイン研究と非実験的デザイン研究で層別化し、two way sensitivity analysesと交互作用の検定を実施し、研究方法の質が異なるプールされたデータの推定値に与える影響を評価した。
データの合成
検索の結果3,821件の文献が得られた。全文調査の対象となった202件のうち、15件を今回の解析対象とした(ランダム化対照試験4件、準ランダム化試験3件、後ろ向きコホート研究8件、合計1,890例)。14件のメタ解析から、再手術のリスクは人工股関節全置換術後のほうが人工骨頭置換術後に比べて低いことが示されたが(相対リスク〔RR〕0.57、95%信頼区間〔CI〕0.34〜0.96、リスク差4.4%、95%CI 0.2〜8.5%)、この結果は主に、研究者に対して治療に対する割り付けが盲検化されていないことによるものであった。12〜48カ月間追跡後のHarris hip scoreは、人工股関節全置換術のほうが一貫してより良好な値だった(3件、246例、加重平均差5.4、95%CI 2.7〜8.2)。5件の異なるスコアの標準化平均差は0.42(95%CI 0.24〜0.61)であり、これは人工股関節全置換術において人工骨頭置換術と比べて関節機能に中程度の優位性が認められることを示している。人工股関節全置換術では脱臼(RR 1.48、95%CI 0.89〜2.46)および全身性合併症(RR 1.14、95%CI 0.87〜1.48)のリスクがやや高かった。
結論
Displaced型大腿骨頸部骨折を有する高齢患者の初回手術の者では人工股関節全置換術は、人工骨頭置換術に比べて再手術率が低く、得られる関節機能がより良好である可能性がある。しかし、対象とした研究間の不均一性とサブグループでの効果の差を考えると決定的な結論を下すことはできず、この分野でのさらなる研究が必要である。
コメント
高齢者では大腿骨頸部骨折は寝たきりとなる重大な傷病である。しかし、外科手術により日常生活が可能となってきている。外科手術として人工股関節全置換術と人工骨頭置換術がある。人工骨頭のみの置換の方が簡単であるが、股関節の全置換術の方が、再手術率が低く、また関節機能の回復が長期に保たれると報告されている。ただし、大規模な比較研究はまだ行われておらず、侵襲性、コストを考えるとどちらがよいのかはっきりしない点も残されている。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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