関節リウマチに対する新しいp38 MAPK阻害薬VX-702の有効性、薬力学および安全性:2件の無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験の結果
Efficacy, pharmacodynamics, and safety of VX-702, a novel p38 MAPK inhibitor, in rheumatoid arthritis: results of two randomized, double-blind, placebo-controlled clinical studies
Damjanov N, Kauffman RS, Spencer-Green GT.
Belgrade University School of Medicine, Belgrade, Serbia.
Arthritis Rheumatism 2009 May;60(5):1232-41.
目的
中等度〜重度の活動性関節リウマチ(RA)患者に対するp38 MAPK阻害薬VX-702の有効性および安全性について評価すること。
方法
中等度〜重度の活動性RA患者を対象としたVX-702に関する12週間の二重盲検プラセボ対照試験(VeRA試験と304試験)を実施した。VeRA試験では、313例に対しプラセボまたはVX-702の1日2回の投与を行った。304試験では117例に対しメトトレキサート(MTX)と併用してのプラセボ、またはVX-702の1日1回の投与もしくは週2回の投与を行った。試験の評価項目は、米国リウマチ学会に基づく20%の改善基準(ACR20反応)、ACR50反応およびACR70反応を満たす患者の割合、炎症バイオマーカーの血清中濃度の変化および安全性評価などとした。
結果
両試験でのプラセボ群に対するVX-702群のACR20反応率の数値上の優位性は、どちらの試験の最高用量群においても対比較における統計学的有意には達しなかった。VeRA試験のVX-702 10 mg群、5 mg群およびプラセボ群における12週目のACR20反応率はそれぞれ40%、36%および28%であった。304試験のVX-702 10 mg 1日1回+MTX群、VX-702 10 mg週2回+MTX群、およびプラセボ群における反応率はそれぞれ40%、44%および22%であった。いずれの試験でも、早くも1週目においてCRP、TNF-α受容体p55および血清アミロイドAの値の低下が認められたが、これらの値は4週目までに速やかにベースライン値に戻った。有害事象については、全体での発現頻度はVX-702群とプラセボ群で同等であった。VeRA試験ではVX-702群の方がプラセボ群よりも重篤な感染症が高頻度に認められたが(2.4%対0%)、304試験ではそうではなかった(2.6%対4.9%)。
結論
この試験では臨床的有効性があまり大きくなかったことに加え、炎症バイオマーカーの抑制が一過性のものであったことから、p38 MAPKを阻害しても、RAでみられる慢性炎症に対しては意味のある持続的な抑制はもたらされない可能性が示唆される。
コメント
近年TNF-αやIL-6などのサイトカインをターゲットにしたサイトカイン阻害薬が著効を示している。しかし、いずれも高分子で注射治療であるため、廉価で経口薬の開発が望まれている。このたび、TNF-α下流のp38MAPK特異的阻害薬VX-702による臨床試験が行われたが、残念ながら有効性は乏しかった。このことから、TNF-αシグナルの下流にはp38以外にNF-κBを介する系もあり、p38を抑制するだけでは臨床効果がなく、少なくともNF-κBなど他の系も阻害しなければならないことが明らかとなった。またIL-6阻害の必要性も示唆された。しかし、今後サイトカインシグナルの細胞内介在因子に対する阻害薬の開発が期待される。事実、Jak阻害薬の有効性も示されている。ただし、これらの阻害薬は生命にとって重要な因子を阻害するので、副作用発現に注意しなければならない。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
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