炎症性腸疾患が疑われる患者のスクリーニングに対する便中カルプロテクチンの使用:診断法のメタアナリシス研究
Faecal calprotectin for screening of patients with suspected inflammatory bowel disease: diagnostic meta-analysis
van Rheenen PF, Van de Vijver E, Fidler V.
Beatrix Children's Hospital, University Medical Center Groningen, PO Box 30001, 9700 RB Groningen, Netherlands.
BMJ. 2010 Jul 15;341:c3369. doi: 10.1136/bmj.c3369.
目的
炎症性腸疾患が疑われる患者の検査に、腸管炎症の高感度なマーカーである便中カルプロテクチンの検査を行うことにより、不必要な内視鏡検査の回数を減らせるかどうかを評価すること。
デザイン
診断精度に関する研究論文のメタアナリシス。
データソース
MedlineおよびEmbaseに2009年10月までに公表された研究論文。
評価された診断法
便中カルプロテクチン値の測定(検討目的の検査)の、内視鏡検査および腸管部の生検標本の病理組織診断(標準的な検査)との比較。
組み入れ基準
炎症性腸疾患が疑われる患者においてデータを前向きに収集しており、2×2の表が作成できる研究論文。各研究論文のデータを用いて便中カルプロテクチンの感度と特異度を2変量データとして解析し、研究論文内での負の相関にあるものについて考慮した。
結果
13研究論文が解析対象となり、このうち6研究論文は成人(670例)、7研究論文は小児および10代の者(371例)に対して実施されたものであった。内視鏡検査で炎症性腸疾患と確認されたのは、成人の32%(215例)、小児および10代の者の61%(226例)であった。論文のデータをプールしたカルプロテクチン検査の感度と特異度は、成人の研究ではそれぞれ0.93(95%信頼区間[CI]0.85〜0.97)と0.96(95%CI 0.79〜0.99)、小児および10代の者の研究では0.92(95%CI 0.84〜0.96)と0.76(95%CI 0.62〜0.86)であった。小児および10代の者の研究の特異度は、成人の研究に比べて有意に低かった(P=0.048)。便中カルプロテクチン値を測定してスクリーニングすることにより、内視鏡検査を必要とする成人の例数を67%減らせると考えられた。内視鏡検査を受けることになる成人33例のうちの3例は炎症性腸疾患ではないと予想されるが、内視鏡検査を要する別の疾患を有している可能性もある。このスクリーニング法の欠点は、成人の6%で偽陰性の検査結果のため見過ごされることとなり診断が遅れることとなることである。小児および10代の者では、便中カルプロテクチン値でのスクリーニングにより、100例中の65例だけが内視鏡検査を受ければすむようになると考えられる。しかし、そのうちの9例は炎症性腸疾患ではないと予想される。逆に、炎症性腸疾患に罹患している小児・10代の者の8%では診断が遅れると予想される。
結論
便中カルプロテクチンの検査は、炎症性腸疾患の疑いに対して内視鏡検査を必要とする可能性がもっとも高い患者を特定するための、スクリーニングツールとして有用である。炎症性腸疾患を安全に除外するための識別力は、成人の研究において小児・10代の者の研究よりも有意に高かった。
コメント
炎症性腸疾患を便検査により診断できるようになると、診断をする医師にとっても、検査を受ける患者に対しても負担が少なくてすむ朗報である。しかし、検査には感度、特異度など100%のものはない。本論文は、大腸の内視鏡検査をゴールデンスタンダードとして便中カルプテクチン検査の測定の感度、特異度を、これまで公表されている論文のデータを用いたメタアナリシスの手法により検証したものである。便中カルプロテクチン検査は炎症性腸疾患のスクリーニング検査としては有用であることを示すことができている。しかし、小児に対しては特異度が低い点が課題として残されている。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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