視神経脊髄炎ではアストロサイトの障害は脱髄よりもはるかに重度である:CSFバイオマーカーの臨床的意義の研究
Astrocytic damage is far more severe than demyelination in NMO: A clinical CSF biomarker study
Takano R, Misu T, Takahashi T, Sato S, Fujihara K, Itoyama Y.
Department of Neurology, Tohoku University Graduate School of Medicine, Aobaku, Sendai, Japan.
Neurology. 2010 Jul 20;75(3):208-16.
背景
壊死と脱髄を伴うアクアポリン4とグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の喪失は、視神経脊髄炎(NMO)の著明な病理学的特徴である。しかし、アストロサイトの障害の臨床病理学的意義およびアストロサイトの障害と脱髄との関係は明らかでない。
目的
視神経脊髄炎において、アストロサイト障害に関する脳脊髄液(CSF)バイオマーカーの臨床的および病理学的意義を検討すること。
方法
視神経脊髄炎(n=33)、多発性硬化症(MS)(n=27)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、虚血、髄膜炎および対照とした他の神経疾患(OND)を有する患者から得たCSF中のGFAP値、S100B値、ミエリン塩基性タンパク(MBP)値および神経線維H(NF-H)値を測定した。
結果
視神経脊髄炎では、再発時のCSF-GFAP値(2,476.6±8,815.0ng/mL)は、多発性硬化症(0.8±0.4ng/mL)と他の神経疾患(0.7±0.5ng/mL)よりも有意に高く、また急性散在性脳脊髄炎(14.1±27.4ng/mL)よりも大幅に高かった。視神経脊髄炎に対するCSF-GFAP値の感度と特異度は、全体で90.9%と76.9%であったが、脱髄性疾患に限定した場合、特異度は90%超まで向上した。CSF-S100B値も同様の傾向を示したが、著明ではなかった。対照的に、MBP値とNF-H値は、視神経脊髄炎と多発性硬化症の間で差がなかった。治療後、CSF-GFAP値は正常値まで急速に低下したが、CSF-MBP値は高いままであった。急性期では、CSF-GFAP値、CSF-S100B値やCSF-MBP値と総合障害度評価尺度(Expanded Disability Status Scale:EDSS)や脊髄病変の長さの間に強い相関が認められた(r>0.6)。視神経脊髄炎では、6カ月目のフォローアップの時点で、CSF-GFAP値のみがEDSSと相関していた(r=0.51)。
結論
CSF-GFAP値の上昇によって反映されるアストロサイトの障害は、臨床的に重要であり、視神経脊髄炎の主要な病理過程であり、また脱髄よりもはるかに重度である。
コメント
容易に検体が採取でき、疾患に特異的で感受性の高いマーカーをみつけることは、病態の解析、治療法の有効性の検討において有用であり、病因の解析にも繋がる重要なことである。しかも、検体の採取が容易で繰り返しが可能な場合はなおさらである。本論文は、髄液中のGFAP(アストロサイトに存在し、細胞が障害されなければ決して細胞外に漏れ出てくることはない蛋白質)測定法を開発し、治療前後での値の比較や、脱髄の指標との比較により、視神経脊髄炎では脱髄よりアストロサイトの障害が強くステロイドが有効であるなどの、病態解明や治療法開発にとって優れた結果をもたらしたものと考えられたため紹介した。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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