好塩基性封入体を伴う若年発症型筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、FUS変異を伴うFUS proteinopathyである
Juvenile ALS with basophilic inclusions is a FUS proteinopathy with FUS mutations
Bäumer D, Hilton D, Paine SM, Turner MR, Lowe J, Talbot K, Ansorge O.
Department of Neuropathology, John Radcliffe Hospital, Oxford, OX3 9DU, UK.
Neurology. 2010 Aug 17;75(7):611-8
背景
好塩基性封入体を伴う若年発症型筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンへの蛋白凝集を特徴とするALSの一形態であり、典型的な散発性ALSとは形態学的および染色的に異なっている。ALSの分子病理学的分類および分子遺伝学的分類において、この種のALSの疾病分類学的位置づけは不明である。
方法
好塩基性封入体を伴う若年発症型ALSを有する4人の患者を神経病理学的に特定し、特異的なRNA結合蛋白質の病理学的研究によってこの種のALSを定義できるという仮説を検証した。免疫組織化学的所見により、fused in sarcoma(FUS)遺伝子の配列決定を行うこととなった。
結果
運動症状は、17〜22歳の間に発症した。疾患の進行は急速であり、認知症を伴わなかった。家族歴は認められなかった。好塩基性封入体は、FUS蛋白質について強い陽性反応を示したが、TAR DNA結合蛋白質43(TDP-43)については陰性反応を示した。グリア細胞と神経細胞の細胞質と核に顆粒状で微小なFUS凝集が認められた。凝集の超微細構造は、断片化した粗面小胞体からの由来と一致していた。3人の患者においてFUS遺伝子の15のエクソンのすべてについて配列決定を行った結果、1人で新たな欠失変異(c.1554_1557delACAG)が明らかになり、他の2人でc.1574C>T(P525L)変異が明らかになった。
結論
好塩基性封入体を伴う若年発症型ALSはFUS proteinopathyであり、ALS-FUSとして分類されるべきである。FUS遺伝子のc.1574C>T(P525L)およびc.1554_1557delACAGの変異はこの独特な表現型と関連している。FUS病理を伴う前頭側頭葉変性症との分子遺伝学的な関係は今後解明されるべきである。
コメント
ALSの5〜10%は家族性と言われており、原因遺伝子としてSOD1angiogeninTDP43などが報告されてきたが、さらに本年の4月には日本の研究者が発見した、細胞内シグナル伝達に重要な役割を果たすNF-κBの遺伝子であるoptineurin遺伝子異常による劣性型ALSも報告されている。本論文で報告されているFUS遺伝子異常例は若年発症の家族性ALSで、昨年より日本、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパで相次いで報告されている。本論文は英国の症例であり、臨床像やコードする蛋白の役割や塩基性封入体の病因における役割を今後解析する必要があるが、FALSをproteinopathyとして捉える考え方を示したものであり、今後、変性疾患の分類を考える上で示唆に富む論文と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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