肺炎球菌性髄膜炎に対するデキサメタゾン補助療法の全国的な実施
Nationwide implementation of adjunctive dexamethasone therapy for pneumococcal meningitis
Brouwer MC, Heckenberg SG, de Gans J, Spanjaard L, Reitsma JB, van de Beek D.
Department of Neurology (M.C.B., S.G.B.H., J.d.G., D.v.d.B.), Department of Medical Microbiology (L.S.), Netherlands Reference Laboratory for Bacterial Meningitis (L.S.), and Department of Clinical Epidemiology and Biostatistics (J.B.R.), Center of Infection and Immunity Amsterdam (CINIMA), Academic Medical Center, Amsterdam, the Netherlands.
Neurology. 2010 Sep 29. [Epub ahead of print]
背景
今回の全国的な前向きコホート研究では、肺炎球菌性髄膜炎を有するオランダの成人を対象としたデキサメタゾン補助療法の実施について評価を行った。
方法
2006年3月から2009年1月の間に、市中感染の肺炎球菌性髄膜炎を有する16歳以上のオランダ人患者全員について前向きに評価を行った。転帰は、望ましくない転帰(退院時のGlasgow Outcome Scaleスコアが1〜4)または望ましい転帰(退院時のスコアが5)として分類した。臨床的特徴および転帰は、ガイドラインによってデキサメタゾン療法が推奨される以前の期間(1998〜2002年)の、肺炎球菌性髄膜炎患者352人からなる同様の全国的なコホートと比較した。多変量の予後モデルを用いて、2コホート間における差をケースミックスで補正した。
結果
2006〜2009年に、肺炎球菌性髄膜炎の357件のエピソードを評価した。入院時の特徴は、早期のコホート(1998〜2002年)と同等であった。デキサメタゾン療法は、2006〜2009年のコホートではエピソードの84%において、1998〜2002年のコホートではエピソードの3%において、抗菌薬の初回投与時または初回投与前に開始された。退院時、望ましくない転帰は、2006〜2009年のコホートの39%と1998〜2002年のコホートの50%において認められた(オッズ比[OR]0.63、95%信頼区間[CI]0.46〜0.86、P=0.002)。死亡率(20%対30%、P=0.001)および難聴の発症率(12%対22%、P=0.001)は、2006〜2009年のコホートで低かった。コホート間の差をケースミックスで補正した後でも、転帰の差は保たれていた。
結論
オランダでは、肺炎球菌性髄膜炎を有する成人患者の補助療法としてデキサメタゾンによる治療が大規模に行われている。全国的なレベルでの肺炎球菌性髄膜炎の予後は、デキサメタゾン補助療法の実施の後でかなり改善している。
エビデンスの分類
今回の研究では、デキサメタゾン(10mg静注、非経口抗菌薬の初回投与前または初回投与時に開始し、6時間ごとに4日間投与する)によって、1998〜2002年のコホートと比べた場合に、2006〜2009年のコホートにおいて望ましくない転帰(Glasgow Outcome Scaleスコアが1〜4)が認められる患者の割合が減少したというクラスIIIのエビデンスが得られた(39%対50%、OR 0.63、95%CI 0.46〜0.86、P=0.002)。死亡率(20%対30%、絶対リスクの差10%、95%CI 4%〜17%、P=0.001)も、2006〜2009年のコホートで低下した。
コメント
細菌性髄膜炎は、診断の遅れ、初期治療の不適切などで依然死亡率の高い神経救急疾患である。本邦では、2006年に日本神経治療学会による細菌性髄膜炎の診療ガイドラインが出された。その中で、抗炎症効果を期待してのステロイド併用補助療法は、起因菌が肺炎球菌性であれば、デキサメタゾン0.15mg/kgを抗菌薬の投与前or投与と並行して開始し、6時間ごと4日間投与することが提唱されている。本論文はオランダでの全国的な前向きコホート研究で、肺炎球菌性髄膜炎に対するデキサメタゾン補助療法のエビデンス(クラスIII)を示した報告である。しかし、異なる結果も多く報告されており、他の細菌の場合や投与量、投与方法、投与期間など検討の余地はあり、今後、より高度のエビデンスを示す研究が必要であろう。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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