インターフェロンβ-1bは、視神経脊髄炎spectrumに属する日本人の視神経脊髄型多発性硬化症を重度に悪化させるかもしれない。
IFNβ-1b may severely exacerbate Japanese optic-spinal MS in neuromyelitis optica spectrum
Shimizu J, Hatanaka Y, Hasegawa M, Iwata A, Sugimoto I, Date H, Goto J, Shimizu T, Takatsu M, Sakurai Y, Nakase H, Uesaka Y, Hashida H, Hashimoto K, Komiya T, Tsuji S.
DDepartment of Neurology, Graduate School of Medicine, University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8655, Japan. jshimizu-tky@umin.ac.jp
Neurology. 2010 Oct 19;75(16):1423-7. Epub 2010 Sep 8
背景
日本では、視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)などの再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の悪化を予防するためにインターフェロンβ-1b(IFNβ-1b)が用いられている。IFNβ-1bによる治療開始直後に、OSMS患者2人が予想しなかった重度の悪化をきたしたことから、同様の患者を特定するため、IFNβ-1bによる治療を受けているRRMS患者の後ろ向きレビューを行った。
方法
9病院の神経内科において、56人のRRMS患者の病歴をレビューし、IFNβ-1bによる治療開始直後に重度の悪化をきたした患者を特定した。
結果
RRMS患者56人のうち、IFNβ-1bによる治療の開始後90日以内に重度の悪化(Expanded Disability Status Scaleのスコアが7.0以上増加した悪化)をきたした患者7人を特定した。7人全例において、IFNβ-1bによる治療開始後の悪化は、それぞれの患者がIFNβ-1bを用いる前にきたした悪化よりも重度であり、IFNβ-1bによる治療の開始から短期間で予想されずに起こったと考えられた。後ろ向き解析により、7人の患者すべてがアクアポリン4に対する抗体を有していたことが明らかになり、これら7人すべての悪化後の臨床特性は、視神経脊髄炎(NMO)spectrumの臨床特性と一致していた。
結論
今回の研究では、IFNβ-1bによりNMO spectrumの患者では重度の悪化が引き起こされる可能性が示された。IFNβ-1bによる治療では、NMO spectrumの患者は、注意深く除外すべきである。
コメント
日本人のOSMSに関する理解は、通常型MSとNMOであるのか、OSMSのなかにNMO spectrumに入るものと入らないものがあるのか等、依然として混沌としている。NMOを考える場合、3椎体を超える長大な脊髄病変(longitudinally extensive spinal cord lesion, LESCL)の有無が診断の根拠になる。本論文は後ろ向き研究であるが、OSMSと考えていた7例でINFβ使用開始時にはLESCLがなかった3例が、治療中にLESCLが加わり、抗アクアポリン抗体を測定してみたところ7例全例が陽性であったという報告である。この指摘により、OSMSとNMOの異同の論議はさておき、またNMO spectrumには関係なく、OSMSと考えられる症例には全例抗アクアポリン抗体の有無を確認後INFβの使用を決定すべきであろう。また本論文では、INFβの免疫バランスに対する作用を示唆する結果もあり、興味ある論文と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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