抗TNFモノクローナル抗体療法では可溶性TNF受容体による治療よりも結核のリスクが高い:3年間の前向きFrench Research Axed on Tolerance of Biotherapies研究に基づく
Risk of tuberculosis is higher with anti-tumor necrosis factor monoclonal antibody therapy than with soluble tumor necrosis factor receptor therapy: The three-year prospective French Research Axed on Tolerance of Biotherapies registry
Tubach F, Salmon D, Ravaud P, Allanore Y, Goupille P, Bréban M, Pallot-Prades B, Pouplin S, Sacchi A, Chichemanian RM, Bretagne S, Emilie D, Lemann M, Lortholary O, Mariette X; Research Axed on Tolerance of Biotherapies Group.
Université Paris 7 Denis Diderot, INSERM U738, Assistance Publique-Hôpitaux de Paris (AP-HP), Hôpital Bichat, Biostatistique et Recherche Clinique, Paris, France.
Arthritis Rheum. 2009 Jul;60(7):1884-94
目的
結核(TB)と抗TNFモノクローナル抗体(mAb)療法との間には関連が認められるが、この関連がTNF阻害によるものであるのか、または薬剤特異的なものであるかどうかは依然検討課題となっている。本研究の目的は、抗TNF mAb療法に伴ったTB症例を示し、危険因子の特定ならびに発生率の推定を行うことであった。
方法
TNF阻害薬の使用に伴ったTBの新規診断のリスクを調べることを目的として、発生率研究および症例対照解析を行った。French Research Axed on Tolerance of Biotherapies(RATIO)研究の一環として、適応症にかかわらず抗TNF mAb療法を受けたフランス人患者を対象に、3年間にわたりTB症例の収集を行った。症例1例に対して、TNF阻害薬の投与を受けた患者2例を対照例とした。
結果
関節リウマチ(n=40)、脊椎関節炎(n=18)、炎症性大腸炎(n=9)、乾癬(n=1)、ベーチェット病(n=1)に対してインフリキシマブ(n=36)、アダリムマブ(n=28)、エタネルセプト(n=5)による治療を受けた69例のTB症例が収集された。化学予防治療を受けていた患者はなかった。性別および年齢で補正したTB発生率は100,000患者・年あたり116.7件であった。標準化罹患比(SIR)は12.2(95%信頼区間[95%CI]9.7〜15.5)であり、インフリキシマブおよびアダリムマブによる治療を受けていた場合の方がエタネルセプトによる治療を受けていた場合に比べ高かった(それぞれSIR 18.6[95%CI 13.4〜25.8]およびSIR 29.3[95%CI 20.3〜42.4]対SIR 1.8[95%CI 0.7〜4.3])。症例対照解析では、エタネルセプトへの曝露と比較した場合、インフリキシマブまたはアダリムマブへの曝露はTBに対する独立危険因子となった(それぞれオッズ比[OR]13.3[95%CI 2.6〜69.0]およびOR 17.1[95%CI 3.6〜80.6])。その他の危険因子は、年齢、抗TNF mAb療法による治療の1年目であること、および流行地域で産まれたことであった。
結論
TBのリスクは、抗TNF mAb療法を受けた患者の方が、可溶性TNF受容体による治療を受けた患者に比べ高い。抗TNF療法の開始早期にあることおよび化学予防治療を受けていないことによってリスクが上昇していると、潜伏TBの再活性化をきたしやすくなる。
コメント
体内に感染した結核菌は細胞内、特にマクロファージ内において生菌状態で長期生存している。感染によるツベルクリン反応が陽性持続するのはこのためである。マクロファージが結核菌を閉じ込めているのであるが、TNF-αは丁度、錠前の役目を担っている。このため、TNF-α阻害投与により鍵がはずれて、結核菌が外へ飛び出し、結核の再感染状態になる可能性がある。今回TNF-α阻害剤として、TNF-αに対する抗体と可溶性TNF-α受容体を用いてリウマチを含めた患者を治療したところ、抗体の方が結核出現頻度が高かった。このことは、単にTNF-αを阻害する作用のみならず抗体のほかの作用、たとえばFcを介した細胞膜破壊への作用の関与もあることを示唆している。
監訳・コメント:大阪大学 先端科学イノベーションセンター 吉崎 和幸先生
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