多発性硬化症におけるインターフェロンβ曝露後の妊娠および胎児の転帰
Pregnancy and fetal outcomes after interferon-β exposure in multiple sclerosis
Amato MP, Portaccio E, Ghezzi A, Hakiki B, Zipoli V, Martinelli V, Moiola L, Patti F, La Mantia L, Mancardi GL, Solaro C, Tola MR, Pozzilli C, De Giglio L, Totaro R, Lugaresi A, Di Tommaso V, Paolicelli D, Marrosu MG, Comi G, Pellegrini F, Trojano M; MS Study Group of the Italian Neurological Society.
Department of Neurology, University of Florence, Florence, Italy. mariapia.amato@unifi.it
Neurology. 2010 Nov 16;75(20):1794-802.
目的
研究期間中に多発性硬化症(MS)を有する女性で認められたすべての妊娠を対象として、インターフェロンβ(IFNβ)への子宮内曝露後の妊娠および胎児の転帰を評価することを目的とし、自然流産のリスクに特に焦点をあてた。
方法
今回のコホート研究では、標準化された半構造化面接をとおしてデータを収集した。受胎後4週間を超えてからIFNβを中止した患者(曝露群)と、受胎後4週間以内でIFNβを中止した患者、または一度もIFNβを投与されていない患者(非曝露群)とを比較した。考えられる交絡因子は、傾向スコア(PS)について補正した多変量解析で検討した。
結果
388人の女性において396回の妊娠に関するデータを収集し、88人を曝露群に分類した(平均曝露期間4.6±5.8週)。IFNβへの曝露は、自然流産のリスク上昇とは関連していなかったが(PS補正後オッズ比[OR]1.08、95%信頼区間[CI]0.4〜2.9、P=0.88)、新生児の体重がより軽いこと(PS補正後β−113.8、P<0.0001)、および身長がより低いこと(PS補正後β−1.102、P<0.0001)と関連していた。曝露群の自然流産の割合は、同じ期間におけるイタリア人母集団について推測された範囲内であった。IFNβへの曝露(PS補正後OR 2.11、95%CI 1.18〜3.78、P=0.012)と帝王切開のみが、早期産の予測因子であった。曝露群では、中央値2.1年の追跡期間中、有意な胎児合併症、奇形、発育異常は認められなかった。
考察
今回の結果から、4週間までのIFNβへの曝露は比較的安全であることが指摘されており、妊娠計画のあるMS女性の治療決定に直面している神経科医を支援できるであろう。
コメント
先月に続きMSに関する論文である。IFNβの子宮内の胎児への曝露の影響に対する報告は少なく、未だ一致した見解はない。使用禁忌との指摘が多いが、本報告は受胎後4週間までに中止すれば特に問題ないとするものである。再発予防目的にインターフェロンで治療中の妊娠希望MS女性患者にとっては朗報であるが、さらなる症例の蓄積が必要であろう。しかし、蓄積と一概に言っても、使用中に偶然妊娠が判明した例などの、エビデンスレベルからいえばIV、Vの範疇程度の成績ぐらいしか期待できないかもしれない。一般的にMSと妊娠との関係では、妊娠後期にはMSは安定すると言われており、妊娠希望のMS患者は現段階ではIFNβの使用は控えるべきであろうか。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed: