非ステロイド性抗炎症薬の使用とパーキンソン病の発症リスクとの関連の検討:コホート内症例対照研究
Use of non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of Parkinson’s disease: nested case-control study
Driver JA, Logroscino G, Lu L, Gaziano JM, Kurth T.
Geriatric Research, Education and Clinical Center, VA Boston Healthcare System, Boston, MA 02120, USA. jdriver@partners.org
BMJ. 2011 Jan 20;342:d198. doi: 10.1136/bmj.d198.
目的
パーキンソン病と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用歴との間に関連があるのかについて男性の大規模コホートを使って検討すること。
デザイン
Physicians’ Health Studyにおけるコホート内症例対照研究。
対象
ベースラインにおいて、NSAIDの常用の適応またはその禁忌がなく、パーキンソン病に罹患していない40〜84歳の男性医師22,007人を対象とした。症例群と対照群は、年齢のみ、または年齢と交絡因子スコア(NSAID使用の指標と併存疾患)をマッチさせて分析を行った。年齢のみを調整した解析の場合は症例患者616人に対し、また年齢と交絡因子スコアを調整した解析の場合は症例患者565人に対し、最高でそれぞれ5人をマッチさせて対照者とした。
地域
米国
主な評価方法
年齢のみ、および年齢と交絡因子スコアでマッチさせた2つの症例対照集団において、パーキンソン病患者と対照者の間の、非アスピリン系NSAIDまたはアスピリンの使用歴に関するオッズ比を検討した。
結果
非アスピリン系NSAIDを常用していた者については、年齢のみをマッチさせた群ではパーキンソン病発症のリスクが高かったが(オッズ比(OR)1.28、95%信頼区間(CI)1.05〜1.56)、交絡因子のスコアもマッチさせた群ではリスクは高くなかった(OR 1.17、95%CI 0.94〜1.46)。非アスピリン系NSAIDを1〜2年常用していた者では、パーキンソン病発症のリスクが高く(OR 1.35、95%CI 1.07〜1.70)、交絡因子スコアをマッチさせた後でも高かった(OR 1.35、95%CI 1.05〜1.75)。これとは対照的に、年齢のみをマッチさせた群では、5年以上の非アスピリン系NSAIDの使用者については有意にリスクが高かったが(OR 1.48、95%CI 1.05〜2.09)、交絡因子スコアもマッチさせた群では相関がほとんど認められなかった(OR 1.03、95%CI 0.70〜1.53)。また、アスピリンを常用していた者では、パーキンソン病発症のリスクが上昇することが示唆された。しかし、パーキンソン病診断の前に5年以上薬物を使用していた者に限定して解析を行ったところ、非アスピリン系NSAIDまたはアスピリンの使用歴とパーキンソン病発症リスクとの間の正の相関が消失した。
結論
今回の症例対照研究からは、NSAIDの使用がパーキンソン病の発症リスクを低下させているとの証拠は確認できなかった。パーキンソン病診断の2、3年前にNSAIDの使用が集中していたことから、NSAIDの使用とパーキンソン病発症の間に認められた正の相関は、発症の2、3年前に治療のためにNSAID薬剤が投与されていたことによる人為的な交絡要因が原因となっている可能性が高いと考えられた。
コメント
パーキンソン病の患者は非ステロイド性抗炎症薬の使用歴を有していることが多く、この薬剤が発症要因になっているのかが検討課題となっている。本研究は米国の男性医師の大規模コホート集団を用いて、この点についてケース・コントロール研究の手法を使って、その関連性を検討したものである。関連があるように見えたのは、医師の処方行動によるものであることが示唆された。今回については関連はなさそうだということを示す結果であった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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