アセチルサリチル酸療法中止後の脳卒中のリスク上昇:英国プライマリケアの研究
Increased risk of stroke after discontinuation of acetylsalicylic acid: A UK primary care study.
García Rodríguez LA, Cea Soriano L, Hill C, Johansson S.
Spanish Centre for Pharmacoepidemiologic Research (CEIFE) (L.A.G.R., L.C.S.), Madrid, Spain; Research Evaluation Unit (C.H.), Oxford PharmaGenesis™ Ltd., Oxford, UK; and AstraZeneca R&D (S.J.), Mölndal, Sweden.
Neurology. 2011 Jan 26. [Epub ahead of print]
目的
低用量アセチルサリチル酸(ASA)療法の中止が虚血イベントのリスクを高めるかもしれない。本研究では心血管疾患または脳血管疾患患者における、低用量ASA療法中止後の虚血性脳卒中(IS)と一過性脳虚血発作(TIA)のリスクを評価した。
方法
英国プライマリケアのThe Health Improvement Networkのデータベースを用い、2000〜2007年に心血管イベントまたは脳血管イベントの二次予防のため、低用量ASA(75〜300 mg/日)の初回処方を受けた50〜84歳の人を対象にしたコホートを特定した(39,512例)。対象者を平均3.4年間追跡しISまたはTIAの症例を特定した。コホート内症例対照分析を行い、低用量ASA療法の中止を含むISまたはTIAのリスク要因を評価した。
結果
ISまたはTIAの全発生率は1,000人当たり年5.0人(95%信頼区間[CI]4.6〜5.4)であった。以前に脳血管疾患(相対リスク[RR]2.79、95%CI 2.05〜3.80)または心房細動(RR 1.71、95%CI 1.28〜2.29)の診断をうけた患者には、これらの疾患のない患者に比べISまたはTIAが有意に多くみられた。低用量ASAを現在服用中の人と比べ、イベント発生の31〜180日前に治療を中止した人にISまたはTIAの全リスクの上昇がみられた(RR 1.40、95%CI 1.03〜1.92)。中止の理由として最も多かったのは患者の治療不遵守であった。
結論
心血管イベントまたは脳血管イベントの二次予防を目的として低用量ASAの処方を受けた患者において、低用量ASA療法の中止により、継続した場合と比べてISまたはTIAのリスクが40%上昇した。
エビデンスの分類
本研究の結果から、低用量ASA療法の中止はその後31〜180日間以内の脳卒中のリスクを40%上昇させるというクラスIIIのエビデンスが得られた。
コメント
今月は難病ではなく、脳血管障害に関する論文を取り上げてみた。The Health Improvement Network(THIN)は英国の一般開業医(GP)による患者300万人以上の医療記録を網羅する巨大データベースだが、それに基づく研究で、低用量のASA治療中止(最も多い原因は治療不遵守)がIS&TIAを引き起こしやすいとの結論であった。服薬開始後の中止というイベントがより一層ISまたはTIAを起こしやすくするのか、高血圧の管理などその他の因子が関与するのかなどは不明であるが、巨大データベースを用いた検討であること、またアドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味する)の重要性も指摘しているため取り上げた。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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