活動性全身性エリテマトーデス患者に対する製剤belimumabの有効性と安全性の検討:第III相無作為化プラセボ対照試験
Efficacy and safety of belimumab in patients with active systemic lupus erythematosus: a randomised, placebo-controlled, phase 3 trial
Navarra SV, Guzmán RM, Gallacher AE, Hall S, Levy RA, Jimenez RE, Li EK, Thomas M, Kim HY, León MG, Tanasescu C, Nasonov E, Lan JL, Pineda L, Zhong ZJ, Freimuth W, Petri MA; BLISS-52 Study Group.
University of Santo Tomas Hospital, Manila, Philippines.
Lancet. 2011 Feb 26;377(9767):693-4.
背景
全身性エリテマトーデスは、Bリンパ球活性、自己抗体、およびBリンパ球刺激因子(BLyS)の濃度上昇などが重なって起こる自己免疫疾患である。活動性全身性エリテマトーデス患者を対象として、完全ヒトモノクロナール抗体製剤belimumab(BLyS特異的阻害薬)の有効性と安全性を検討した。
方法
血清反応で確定診断された中南米、アジア太平洋、および東ヨーロッパの全身性エリテマトーデス患者の中で、エストロゲンの疾患活動性指標(SELENA-SLEDAI)のスコアが6以上である年齢18歳以上の患者を、多施設共同の第III相臨床試験に組み入れた。中央の音声自動応答システムにより、患者は、belimumabの1 mg/kg投与群、10 mg/kg投与群、プラセボ群の3群に1:1:1の比率で無作為に割り付けられた。いずれの群も、第0日、第14日、および第28日、その後は28日ごとに48週まで1時間の静脈内投与、または標準治療が施された。患者、治験責任医師、治験コーディネーター、および治験依頼者は、どの患者がどの治療を受けているかについてわからないように盲検化され割り付けられた。治療の有効性評価項目は第52週目に全身性エリテマトーデス反応指標(SRI)を用いて行った。病気の改善の判定はSELENA-SLEDAIスコアの4ポイント以上の低下、BILAG指標でカテゴリーAにあたる器官別スコアが認められないか、カテゴリーBにあたる器官別スコアが1以下、および医師による全般的評価指標(PGA)で悪化(0.3未満の増加が認められないこと)とした。解析は、修正intention-to-treat法を用いた。
結果
867例の患者に対し薬剤belimumabを1 mg/kg投与した群(n=289)、10 mg/kg投与した群(n=290)あるいはプラセボを投与した群(n=288)に無作為に割り付けた。そのうち、実際の対象となったのは865例で、薬物1 mg/kg投与群(n=288)、10 mg/kg投与群(n=290)、およびプラセボ投与群(n=287)に対し第52週目に評価解析を行った。SRIの反応指標が改善した者は、プラセボ投与群では125例(44%)であったのに対し、1 mg/kg投与群では148例(51%)、オッズ比1.55(信頼区間1.10〜2.19)、10 mg/kg投与群では167例(58%)、オッズ比1.83(信頼区間1.30〜2.59)であり、いずれもbelimumab投与群で有意に高かった。SELENA-SLEDAIスコアが4ポイント以上低下した患者の割合は、プラセボ群の132例(46%)と比較して、1 mg/kg投与群では153例(53%)(オッズ比1.51、信頼区間1.07〜2.14)、また10 mg/kg投与群では169例(58%)(オッズ比1.71、信頼区間1.21〜2.41)で、いずれも有意に高かった。BILAG Aの再燃が認められない、または新たなBILAG Bの再燃が1回以下しか認められない患者の割合は、プラセボ投与群の210例(73%)と比べて、1 mg/kg投与群では226例(78%)(オッズ比1.38、信頼区間 0.93〜2.04)、10 mg/kg投与群では236例(81%)(オッズ比1.62、信頼区間1.09〜2.42)であり、belimumab投与群でやや高かった。PGAスコアの悪化が認められなかった患者は、プラセボ群では199例(69%)であったのに対し、1 mg/kg投与群227例(79%)(オッズ比1.68、信頼区間1.15〜2.47)と10 mg/kg群231例(80%)(オッズ比1.74、信頼区間1.18〜2.55)で、いずれの投与群においても割合が高かった。有害事象の発現率は、プラセボ投与群、1 mg/kg投与群および10 mg/kg投与群で同等であった。重篤な感染が1 mg/kg投与群の22例(8%)、10 mg/kg投与群の13例(4%)、およびプラセボ投与群の17例(6%)に認められた。また、薬物投与時に重度または重篤な過敏症反応が認められたのは1 mg/kg投与群で2例(1%未満)、10 mg/kg投与群で2例(1%未満)であったが、プラセボ投与群では認められなかった。悪性疾患はいずれの群にも認められなかった。
解釈
belimumabは全身性エリテマトーデスに対して適応承認される最初の標的分子製剤となる可能性がある。一般的な自己免疫疾患に対する新しい治療選択肢の一つとなる可能性がある。
コメント
ヒトの免疫システムは巧妙にできており、解明が進めば進むほど、様々な細胞や組織と生理活性物質が密接に関わっていること、またこのために免疫系の乱れがヒトの病気の原因となることがわかってきている。自己免疫疾患の中で慢性関節リウマチの患者に対する治療薬物は実用化されているが、全身性エリテマトーデスの患者に対してはステロイド剤などの非特異的免疫抑制剤以外は存在していない状況にある。本論文は、全身性エリテマトーデスに対する最初の特異的分子標的治療薬として誕生した薬物に関する臨床試験結果をまとめたものである。今後の治療薬剤として実用化される期待がもたれている。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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